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◆実況も解説も歓喜の涙
男子ゴルフの海外メジャー・マスターズで、松山英樹が日本男子初の海外メジャー優勝を果たした。
2位と4打差で最終日に臨んだ松山は1番をボギーでスタートしたが、2番でバーディー。3番から5番までは今大会を象徴するような、正確なアプローチとパッティングでパーセーブした。そして、8番、9番を連続バーディーとし、リードを保った。
1打目をバンカーに入れてパー3の12番をボギーとして迎えた13番。第1打林へ向かったが、木に当たってセミラフまで戻ってくる運も味方につけ、この日4つめのバーディーを奪った。
ただ、ここからが我慢のゴルフ。15番、16番で連続ボギーをたたいた。一方、2位タイでスタートしたウィル・ザラトリスは15番と17番でバーディーを取るなど、じわりじわりと松山に迫った。
松山は2位に2打差をつけて、パー4の最終18番へ。3打目をグリーンに乗せ、慎重に2打をかけてウイニングパットを沈めた。松山は試合後「2打差でよかった」と笑顔で振り返った。
優勝を決めた松山は目を潤ませ、関係者と抱擁を交わした。その歓喜の瞬間、生中継していたTBSの実況を務めていた小笠原亘アナウンサーは声を詰まらせながら「松山英樹マスターズを勝ちました。ついに日本人がグリーンジャケットにそでを通します。(声を詰まらせる)日本人が招待を受けて85年。ついに、ついに世界の頂点に松山が立ってくれました」と伝えた。
そして、しばらく沈黙した後「10年の道のりは決して平たんではありませんでした。大学生で震災を経験し、東北の皆さんが背中を押してくれました。10年です。ついに、アジア人としての途方もない高い壁だと思われていたこのマスターズの壁を松山英樹はきょう乗り越えました。おめでとう。そして、ありがとう」と声を震わせた。
◆感極まる実況に分かれる賛否
解説の中嶋常幸とゲスト解説の宮里優作、2人のプロゴルファーも感極まり、涙ながらに松山を祝福した。小笠原アナウンサーの呼びかけに、中嶋は鼻をすすりながら「すいません。後半苦しかったから、本当によかった」と声を絞り出した。
小笠原アナウンサーが「この偉業のすばらしさをわかっているからです」と続けると、宮里も「本当にこんな日が来るなんて。彼の夢に僕たちが乗っかっているんですけど。本当に彼はここを目指して、日ごろからトレーニングだったり、練習してきたと思うので、本当によかったですし、ありがとうと言いたい」と声を詰まらせた。
この実況と解説には、ファンから賛否の声が上がっている。インターネット上では「暗いニュースが続く中、歴史的快挙で日本人として誇りに思う。解説者、アナウンサーも泣いていて、もらい泣きしてしまった。おめでとうございます」、「解説の中嶋さんと、実況の方の涙声が印象的です。私も勝手に応援しているだけですが、涙が止まりません」、「あのおしゃべりのプロ、中嶋さんも優勝が決まってしばらくは無言だった。感極まっていたと思う」と思いを共有する声が上がった。
一方、「実況が感情を爆発すると、見ている方の感動が薄れる」、「視聴者が求めているのは、実況や解説の私情ではない。その場を見ているからこそ、専門家だからこその視点や言葉で情報を伝えたり、解説したりしてもらいたい」、「今回に限らずスポーツの感動的な場面では、意味のない内容を無理に話さなくていい。主役は選手。現場の音や表情を求めているので、黙っていてもらった方が感動する」、「松山が東北福祉大出身とはいえ、無理やり東日本大震災の話をつなげるのは疑問。出身は松山市なので」などの意見もあった。
また、歴史的瞬間には「甲子園は清原のためにあるのか」、「伸身の新月面が描く放物線は栄光への架け橋だ」など、語り継がれる実況の名言も生まれているだけに「こういう場面で、視聴者を惹きつける胸を打つ言葉が出てくるアナウンサーはすごい」といったコメントもあった。
スポーツメディア「New Road」編集部
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