以前にご紹介したWORLDPADELCHAMPIONSHIPの規模感を感じ取って頂けた方は、世界で見るとパデルというスポーツが本当に流行っていことが分かったでしょう。まだ一部の国や地域を除き、パデルはマイナースポーツのカテゴリに入ります。しかし一方、今がビジネスチャンスと捉えている世界的な企業や事業家が増えてきているのも事実です。
パデルのプロツアーといえば、私が挑戦しているWORLD PADEL TOUR(以下WPT)が名実ともに現在ナンバーワン。しかし去年、新たに「APT PADEL TOUR」(以下APT)という名称のツアーが創設されました。その前身は、2018年にモナコの事業家が立ち上げた「INTERNATIONAL PADEL TOUR」というツアー。最終的に契約条件等が上手くいかず、途中で頓挫してしまったのです。その後、2020年にAPTと名称を変え再スタートとなりました(※2020年はコロナの影響で3月にツアーが中止)。この新しいツアーの目的は、当初の名称通り「パデルの国際化」です。
WPTもスペイン以外の国で開催はされていますが、7割以上がスペイン国内で行われています。APTの目的にヨーロッパパデル連盟が賛同したため、APTはスペインだけでなく他のヨーロッパ地域や南米でも行われていますし、今年は南アフリカでも開催される予定です。残念ながら、まだアジア地域ではWPTとAPTのどちらも開催されていませんが、これは間違いなく時間の問題でしょう。
パデル界に第三の勢力登場
今年、衝撃的なニュースが日本にも飛び込んできました。フランスの有名なプロサッカーチーム「パリ・サンジェルマン」(以下PSG)のオーナーで、Qatar Sports Investments(以下QSI)という投資ファンドの代表も務めるNasserAl-Khelaifi氏が国際パデル連盟(以下FIP)とプロパデルプレーヤー協会(以下PPA)と協力し、パデル界に新たなプロツアー(名称未定)を発足させたのです。このニュースは、世界のパデル界にかなりの衝撃を与えました。なぜなら現在のトッププレーヤーのみならず、予選レベルの選手にとっても大変魅力的な内容だからです。
詳細は控えますが、なんといっても大きいのは賞金。ざっくり計算しても、現在行われているWPTやAPTの3〜5倍以上の金額が提示されています。この賞金は予選敗退者にも支払われ、本戦出場者には交通手段や宿泊先などがツアー側から無償提供されるなど、プロテニス界並みの待遇です。その他に保険や年金のような仕組みもあり、現在プロパデルプレーヤーを職業としている、あるいは将来その道に進もうと考えている人、パデルをプレーしている世界中の子供たちにも新たな夢や目標となり得るだけの内容でしょう。以前から、WPT側と選手側には待遇面で溝がありました。今回の第三のツアーは選手側に寄り添っているため、かなり多くの選手がこのツアーに移行するだろうと言われています。
ただ、ほとんどの選手は2023年まで「WPTでしかプレーしない」という契約を残しているため、そう簡単ではありません。つい最近、WPT側は契約違反を犯したプレーヤーに2,000〜3,000万の罰金を科すとの声明を出しました。ですが、トッププレーヤーにとっては罰金を支払ってでもツアーを移りたいと思えるレベルの内容です。そのため、今後どのような流れになるのかはまったく読めません。もしこのツアーがパデル界でのメインとなった場合、間違いなく日本だけでなくアジア地域にもトーナメントが作られるでしょう。そうすれば、わざわざヨーロッパや南米など遠く離れた地域まで行かなくとも、日本に拠点を置きつつパデルで生きていくことも不可能ではないかもしれません。
まだまだ未確定な要素は多いですが、これは選手にも指導者にもとても嬉しいニュースです。 選手と指導者どのような立場でかは分かりませんが、私もこのツアーと関われるよう引き続き精進したいと思います。 今年もパデル界から目が離せません!
2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。