ここ最近パデル界を騒がせている一番のニュースは、何といっても国際パデル連盟(FIP)とプロパデルプレーヤー協会(PPA)、そしてカタールスポーツインベストメンツ(QSI)が協力して立ち上げた新しいツアーです。正式名称は未定ですが、ここでは仮に「FIPツアー」としておきます。
今年、世界各国で10大会程度が開催されると言われているうち、記念すべき第一回大会が3月末にカタールで行われます。賞金総額は約7,000万円、しかも男子のみでこの金額。一気にテニスに近づきました。このコラムを書きながら、私自身もエントリーするかどうか考えています。コロナだけならまだしも、ウクライナ情勢も入ってくると、さすがに海外渡航は以前より考えることが増えてきました。とはいえ、この規模の大会がどんなものかこの目で見てみたい。そして試合に出場し、ランキングを上げたいという気持ちもあって、とても悩んでいます。
現在の総エントリー数は100ペア程度です。そのため予選を2回、もしくは3回勝つと本戦出場が見えてきます。例えばWORLD PADEL TOURなら、本戦に出場するには予予選含め5〜6回勝たなくてはいけません。これに比べると、現段階ではFIPツアーの方がチャンスがあります。しかも、エントリーしている中にはランキングの低いペアもおり、二人合わせて0ポイントといういうペアも。この規模感とエントリー数、しかもこのレベルというのは最初で最後、千載一遇のチャンスのような気がしています
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少しずつテニスに近づいてきた
1992年から2年置きに開催されているWorld Padel Championship(WPC)が今年も開催されます。 2020年大会がコロナで1年延期となり、これが去年11月に開催されました。そのため、2年続けてWPCが開催されるというイレギュラーな形になっています。今年は本戦の開催地がスペインのマドリッドで確定しており、日本が加盟しているアジア太平洋地域(APAC)予選は6月頃、恐らくエジプトで行われるのではないかと言われています。
ここからは私見になりますが、先ほどからお伝えしている新しいツアーが今後パデル界を引っ張っていくと仮定すると、当然ですが強い選手がそこに集中するでしょう。その結果、「ランキングを上げたい」「強くなりたい」という選手にとって、そこが一番の目標になります。プロとして活動しやすく、そこに関わることでレベルアップを図れるのであれば、大多数の競技者が目指すのは自然なことでしょう。
一方、テニスのデビスカップや野球のWBCなど他の競技の国別対抗戦では、怪我や疲労を理由にそういったイベントに出ない選手も一定数います。なぜならそういうイベントは、多くが通常のプロツアーと直接関係がない(賞金がない、ポイントがつかない等)ことがほとんどだからです。また、普段から参加しているツアーの方がレベルや格が高いため、イベントに出る理由がないという選手も少なくありません。もっと簡単に言うなら、“次に繋がる”なら出るけれど、一回完結型なら出ない。もちろん国別対抗戦には名誉ややり甲斐、人によって強い思い入れなどもあり、その良し悪しについて語るつもりはありません。私自身、パデルコートの上で初めて「君が代」を聞いたときは、これまで生きてきて味わったことのない感情になりました。また、海外で日の丸やJAPANという文字の入ったウェアを着てプレーするのも、自分が思っている以上に重いことだと実感しています。ただ、選手としてより高い場所からの景色を見たいのであれば、どちらを優先すべきかは自ずと見えてくるような気がします。現時点での私なりの答えとしては、「FIPツアーに出場できるようランキングと実力を上げていく過程で、国別対抗戦のメンバーとして招集される」がベストに近いベターだと思っています。
ツアーの中でのランキングは、完全に自分でコントロールが可能です。しかし国別対抗戦の代表に選ばれること、あるいは選ばれて出場できたとしても、チームとして戦うため普段の試合より勝敗を自分でコントロールすることは難しくなります。 チームでしか試合の機会がない競技ならば別ですが、個人で戦える土俵があるパデルは、自分でコントロールできる裁量が大きいところで勝負した方がやり甲斐や納得感があるのではと個人的に思っています。
2022年の全日本は3月・12月の2回
国内に目を向けてみると、日本パデル協会(JPA)はFIPに加盟しています。FIPに加盟している国々は恐らく今年から新しいツアーが始まった関係で、自国の公式戦のフォーマットをFIPツアーと連携しやすくなるのではないでしょうか。それが理由かどうかは分かりませんが、日本は2023年度から国内の公式戦の期間が1〜12月に変更となるため、2022年度の全日本が今年12月に開催されます。3月末に2021年度の、そして約8ヶ月後の12月に2022年度の全日本が行われるのです。
パデル界はまだ成長の真っ只中にいるので、こういったイレギュラーなことは度々起こります。しかし、個人的には全く気になりませんし、 むしろ「1年に2回も全日本がある」状態にワクワクしているくらいです。
パデルは日本でも世界でも前進し続けています。観だけでも十分に楽しめますし、もちろんプレーしても楽しいスポーツです。3月に行われる全日本はライブ配信も行われるほか、現時点では有観客で開催予定(会場観戦には事前申込と当日体温チェックシートの記載が必要)。パデルに少しでも興味があれば、是非ご覧ください。私自身、一つでも上のステージで戦えるよう全力を尽くして頑張ります。
2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。