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◆大栄翔が埼玉県に初の賜杯
異例の大相撲初場所が幕を閉じた。新型コロナウイルスの猛威は角界にも及び、横綱・白鵬をはじめ相次いで感染者が判明した。初日から休場した十両以上の関取は16人。戦後最多だった。
取り組み数も減り、場所を15日間続けられるのか懸念もあったが、平幕の大栄翔が救世主となった。三役7人を総なめにして、中日に無傷で勝ち越し。優勝争いのトップを一度も譲ることなく、13勝2敗で賜杯を手にした。
◆優勝未経験は11府県
大栄翔は、全国屈指の相撲強豪校・埼玉栄高校出身。全国の中でも人口が多い埼玉県だが、県内出身力士の幕内最高優勝は大栄翔が初めてだった。悲願の初優勝で埼玉は“後進県”から抜け出した。これで優勝者が出ていないのは、宮城、静岡、岐阜、滋賀、京都、福井、島根、徳島、宮崎、沖縄の11府県となった。
◆翠富士が静岡県初の三賞
その中の1つ、静岡県では初めての三賞受賞者が誕生した。東前頭14枚目の翠富士(伊勢ケ浜部屋、24)。十両優勝して新入幕で迎えた今場所、9勝6敗の好成績を収めて技能賞を獲得した。場所前に目標としていた三賞を手にし「予定では10番勝って敢闘賞がほしかったので、1番少なかったがうれしいです」と喜んだ。
◆「18番」肩すかしで5勝
身長171cm、体重114kg。小柄な体から多彩な技を繰り出す。中でも得意としているのが「肩すかし」。差し手で相手の腕の付け根や脇に浅く引っ掛けて、手前に引きながら体を開き、もう一方の手で相手の肩をたたいて引き倒す。
今場所の9勝のうち5勝が、この得意とする決まり手だった。翠富士は過去6場所で51勝を挙げ、肩すかしでの白星が最も多く、全体の25%を占める。それに次ぐ、「押し出し」の18%、「寄り切り」の12%を引き離している。初場所の番付では幕内力士が42人いるが、過去6場所で最も多い決まり手が「寄り切り」と「押し出し」以外なのは6人だけで、いずれも「はたき込み」となっている。
◆先場所は24年ぶりの決まり手も
今場所の翠富士が“王道”の決まり手で白星を挙げたのは、「押し出し」が1番あるだけ。残りは「肩すかし」のほか、「渡し込み」、「すくい投げ」、「すくい投げ」、「引き落とし」となっている。先場所は、十両で24年ぶりとなる珍しい決まり手「ずぶねり」を決めている。数ある引き出しから、どんな技を選ぶのか、ファンを魅了する数少ない関取といえる。
◆静岡出身者の最高位更新 初の三役に期待
翠富士の地元「サッカー王国」の静岡県も活躍に沸いている。県内出身力士として初の三賞受賞。ただ、静岡県からは幕内最高優勝はもちろん、これまでに三役も出ていない。幕内経験者は翠富士が5人目で、最高位は磋牙司の前頭9枚目。今場所、前頭14枚目で9勝を挙げた翠富士には、記録更新への期待が高まっている。
「肩すかしだけと言われないようにしたい。来場所も頑張ります」と意気込みを語った翠富士。見据えるのは静岡県初の三役、さらには優勝。相撲”後進県”からの脱却は技巧派の小兵力士に託されている。
スポーツメディア「New Road」編集部
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