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◆延長なし ポイントは「中継ぎ」

開幕まで3日となったプロ野球。収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今シーズンは延長戦がなく、9回で試合が打ち切られる。12球団の代表者会議で決定した。

 

開幕直前でチームの戦い方を左右する変更が決まり、ロッテの井口資仁監督は「延長を見据えた場合と9回で終了するのは違うので、どんどんメンバーを出していける」。ヤクルトの高津臣吾監督も「延長がないのはやりやすい反面、おもしろさに欠ける部分がある。サヨナラのチャンスが9回しかいないし、選手起用が変わる」と戦略が変わってくると話した。一方、巨人の原辰徳監督は「ルールは統一なので何とも思わない。投手は9回で終わるので、正常であれば少ないメンバーで戦う気がする」と影響がないと強調した。

 

延長戦がなくなると、どんな影響が出るのか。多くのプロ野球解説者が口にするのは「中継ぎの使い方」だ。同点でも試合は9回で終わるため、首脳陣は延長戦を考える必要がない。そうなると、投手を出し惜しみせず、9回から逆算して投手を起用することが可能となる。

 

全てのチームに同じ条件になるとはいえ、“恩恵”を受けそうなのは、どのチームなのか。終盤の投手が安定しているソフトバンクは、他球団よりも優位に映る。実績のある森唯斗、岩嵜翔に加えて、杉山一樹や高橋純平、泉圭輔ら計算できる若手も多い。昨シーズン最優秀中継ぎ賞を受賞したリバン・モイネロの調整は遅れているが、工藤公康監督は「普通の投手がやるように連投してもらわないといけない。万全の状態になるよう、しっかりつくってから1軍に合流してもらう形になると思う」と焦りはない。モイネロが連投できる状態まで待てるだけの戦力がそろっている。

 

◆セ・リーグに影響大

投手が打席に立つセ・リーグは、パ・リーグ以上にベンチワークが重要になるだろう。終盤の3回を任せられるチームは、早い回に勝負を仕掛けることもできる。昨シーズンの投手陣を見ると、9回打ち切りをうまく活用できそうなのは中日だ。新型コロナ感染拡大により来日が遅れ、昨シーズン2勝0敗21セーブ、防御率1.13と抜群の安定感を誇ったライデル・マルティネスが、開幕に間に合わないのは痛手だが、中継ぎの層は厚い。

 

マルティネスに代わる守護神の筆頭には祖父江大輔がいる。昨シーズンは54試合で2勝0敗3セーブ28ホールド、防御率1.79の好成績で最優秀中継ぎ投手に選ばれた。さらに、福敬登は53試合に登板して5勝5敗2セーブ25ホールド、防御率3.55。2年連続で50試合以上に登板し、30ホールドポイントで祖父江とタイトルを同時受賞した。他にも、又吉克樹や谷元圭介、岡田俊哉ら実績のある投手が並ぶ。中盤までリードする展開で逃げ切る態勢が整っていることはチームに余裕が生まれ、相手チームにはプレッシャーとなる。

 

9回までとイニング数に制限がかかれば、野手と投手のベンチ入り人数のバランスを変えたり、代打や代走のようなスペシャリストを重視したりするチームがでてくる可能性もある。いずれにしても、延長戦がないという与えられた条件は同じ。ファンにとっては、監督の采配や、チームとしての戦略に注目する新たな楽しみとなるかもしれない。

By New Road 編集部

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