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◆事実上更新不可能な記録

日本のプロ野球は開幕から1週間が経ち、メジャーリーグもシーズンが始まる。基本的なルールは同じでも、スポーツは時代とともに形やスタイルが変わっていく。野球では、投手が先発・中継ぎ・抑えの分業制となり、先発投手の登板間隔や球数を管理するようになった。攻撃でもスモールベースボールや、フライボール革命などという言葉が生まれている。球場や道具、トレーニング方法が変化すれば、戦い方が変わるのは当然だろう。

 

こうした流れから、メジャーリーグには事実上、更新は不可能といわれる記録がいくつもある。打撃に関するものを見ていくと、まずは打率。シーズン記録は1901年にナップ・ラジョイ(アスレチックス)が残した.426(544打数232安打)。過去40年で、この記録に最も近づいたのがトニー・グウィン(パドレス)で、打率.394(419打数165安打)。この年は、選手会による長期間のストライキでシーズンが打ち切られた。

 

2010年以降では、新型コロナウイルスの感染拡大により60試合に短縮された昨シーズン、DJ・ルメイユ(ヤンキース)がマークした打率。364がトップ。それを除くと2010年のジョシュ・ハミルトン(レンジャーズ)の打率.359と、4割には程遠い数字となっている。

 

他にも、“不滅の記録”となっているのは盗塁。リッキー・ヘンダーソン(アスレチックス)が1982年に記録した数は「130」。この記録に過去10年で最も近づいたのは、2010年のフアン・ピエール(ホワイトソックス)で「68」。投手のクイックモーションや、捕手の送球技術が向上した近年は、盗塁の難易度が上がっている。打点は、1930年にハック・ウィルソン(カブス)が、155試合で驚愕の191打点を記録している。

 

◆メジャーで犠打激減

そして、興味深いのが犠打。歴代記録は1917年にレイ・チャプマン(インディアンス)でマークした「67」。しかし、時代が進むと、犠打は相手が労せずしてアウトを1つ手にすることができるという考え方が広がっていった。

 

年々、その数は減少する傾向にあり、過去40年では1990年のジェイ・ベル(パイレーツ)の「39」が最も多い。さらに、ここ10年ではフアン・ピエール(ホワイトソックス)の「19」が最多。2019年は投手が記録した「15」、昨シーズンは「5」まで減り、作戦の1つに犠打を使うチームは減少の一途をたどっている。

 

メジャー30球団を合わせた昨シーズンの犠打の数は「126」しかない。1チーム平均4つほど。昨シーズンは60試合だったので、各球団は15試合に1回しか犠打を記録していないことになる。最多のオリオールズでも「15」。レッズ、ブルワーズ、レイズの3チームは昨年、シーズンを通じて犠打が1つもなく、ヤンキースやカブスなど7チームは、わずか1つだけだった。

 

一方、昨シーズン120試合に減少したNPBでは、12球団合わせて「904」の犠打が記録されている。1チーム平均にすると約「75」。2試合に1回以上の頻度で、犠打が使われたことになる。近年の傾向も大きく変わっていない。減少が加速すると予想されるメジャー全体の犠打の数と、NPBの上位数人を合計した犠打数が同じになる日は遠くないかもしれない。

By New Road 編集部

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