◆北朝鮮が新型コロナ理由に五輪不参加へ
北朝鮮の体育省が開幕まで4カ月を切った東京五輪に参加しない方針を明らかにした。体育省が運営するサイトに「3月25日に平壌で開かれたオリンピック委員会の総会で、委員たちの提議に従ってオリンピックに参加しないことを決定した」と掲載。その理由を「世界的にまん延している新型コロナウイルスの危機的状況から選手を守るため」としている。
北朝鮮は現在までに国内での新型コロナ感染者は1人もいないと主張し、感染対策として国境を封鎖している。北朝鮮の発表を受け、大会組織委員会の橋本聖子会長は「北朝鮮不参加の情報は朝の報道で知った。IOCやJOCからも話は聞いていない」と困惑した様子。丸川珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣は「報道を拝見したので、詳細を確認している」と話し、今後、他の国にも不参加の動きが広がる可能性を問われると「事情がよく分からないので、何とも申し上げられない」と答えた。
開催国の日本としては、北朝鮮に続いて新型コロナ感染のリスクを懸念する国が増え、注目度や盛り上がりに欠ける五輪となる懸念がある。一方、失望が広がっているのが韓国政府だ。韓国の統一省は「東京五輪が朝鮮半島の平和と南北間の和解・協力を進展させる契機になると望んでいた。新型コロナウイルスの感染拡大により、それが叶わなくなり残念に思う」とコメントを発表した。韓国政府は、北朝鮮が参加した2018年冬季の平昌五輪が朝鮮半島の緊張緩和につながったと捉えていて、東京五輪で再び関係改善を目指していた。先月には文在寅大統領が「東京五輪の成功に向けて韓国は協力する」と演説していた。
韓国のメディアによると、不動産政策の失敗などで、文在寅大統領の支持率は過去最低を更新している。韓国政府東京五輪をきっかけに南北や米朝対話を進め、国民の信頼回復を描いていただけに、コメントには北朝鮮の五輪不参加への落胆がにじむ。さらに、このコメントには日本からも韓国からも「ここまで露骨にスポーツイベントを政治目的に利用するとは」、「五輪は対話の機会ではない」など、呆れる声が上がっていた。
東京五輪で支持率回復を目論んでいた韓国政府は、北朝鮮の不参加に対するコメントで逆に支持率を下げそうな雲行きだ。
スポーツメディア「New Road」編集部
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