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◆5年連続盗塁王は社会の教員免許
プロ野球選手になるには特別な資格や免許は必要ない。ただ、激しい競争を勝ち抜き、狭き門を突破しなければプロにはなれない。子どものころから野球中心の生活を送っているが、中には意外な資格を持っている選手もいる。
有名なのは、阪神でセ・リーグ初の5年連続盗塁王に輝いた赤星憲広。愛知県の大府高校から亜細亜大学に進学し、社会科の教員免許を取得した。赤星は「野球部の練習と単位を取るだけでも大変なのに、教員免許の単位も取らないといけなかったのできつかった。どうしても練習を休まなければならないときもあり、一心不乱に野球に打ち込めないことを申し訳なく思った」と当時を振り返る。
多忙になることを覚悟の上で教員免許を目指した理由については「自分の中にプロとしてやっていける自信がなかったので、教員資格という確かな保証もほしかった」と話している。
赤星は大学卒業後、JR東日本に進んだ。ここではプロ入りできず、そのまま会社員として働くことも想定し、車掌の資格も取得した。実際に車掌として電車に乗ったことはないが、プロ野球の夢が実現しなければ、車内アナウンスをしていたかもしれない。それとも、教壇に立っていただろうか。
教員免許を持っている選手は他にもいる。東京学芸大学からヤクルトに入団した日本ハム・栗山英樹監督は、在学中に小・中・高の教員免許を取った。比較的多いのは、メジャーでも活躍した上原浩治のように、体育大学在学中に体育の教員免許を取得する選手。そんな中、ドラフト会議でヤクルトから育成で指名を受けた塚本浩二は、神戸大学で家庭科の教員免許を取ったことが話題となった。
阪神のエースで、ヤンキースでもプレーした井川慶は茨城県の水戸商業高校で日商簿記2級に合格。プロ野球選手にならなかったら、税理士になろうと思っていたと話している。
◆超難関の公認会計士合格
同じ日商簿記2級に高校時代合格した奥村武博は引退後、公認会計士になった。元プロ野球選手としては初めてだという。奥村は岐阜県の土岐商業高校から、ドラフト6位で阪神に入団。しかし、1軍登板はなく23歳で現役を引退した。その後、バーやホテルの調理場勤務などを経て、34歳の時に合格率10%とも言われる難関国家試験に合格した。
奥村は簿記の重要性について「簿記を勉強した経験が会計士試験にチャレンジするきっかけになった。きっかけを幅広く持っておくことが自分の将来を助ける。プロスポーツ選手は競技に打ち込みアルバイトの経験もなく、引退後は経済のことを知らないまま別の仕事に就いて失敗することも多いのが実情。簿記を学んで資格を取れば自分の武器になり、新しい世界でも成功しやすくなる」と語っている。
スポーツをしていてプロになれるのは一握りしかいない。さらにプロの世界で成功するのは、ごく限られた人だけ。次の道で再スタートを切るとき、全く違う分野の資格が武器となることもある。
スポーツメディア「New Road」編集部
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