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◆サッカー界のシンデレラストーリー
結果を出せば、どんどん上り詰めることができるプロスポーツの世界。昨年アメリカの経済誌フォーブスが発表した「2020年スポーツ選手長者番付」では、サッカーやバスケット、ゴルフなど、世界各国で活躍するトップスポーツ選手の年収が発表された。
年収は給与や賞金、スポンサー収入などを合わせたもので、トップはテニスのロジャー・フェデラーの1億630万ドル(約114億円)。2位と3位はどちらもサッカーで、クリスティアーノ・ロナウドの1億500万ドル(約112億円)、リオネル・メッシの1億400万ドル(約111億円)となった。テニスの大坂なおみは女子史上最高額の3740万ドル(約40億円)で、全体の29位に入っている。
日本のプロ野球界では、独立リーグや育成契約から1軍の主力となった選手が少なくないが、サッカー界にも”成り上がり”がいる。ヴィッセル神戸で背番号「9」をつけるFW藤本憲明。移籍2年目となった昨シーズンはリーグ戦28試合で6得点をマークしている。
現在31歳の藤本は中学まで地元ガンバ大阪の下部組織で過ごし、高校は強豪校・青森山田に進んだ。その後は近畿大学を卒業し、2012年にアマチュア最高峰リーグと言われるJFLの佐川印刷に加入した。サッカーだけで生活するプロとは違い、午前は練習、午後は仕事をしながらサッカーを続けていたという。
藤本は佐川印刷で得点源としてチームをけん引。3年目の2014年にステージ優勝に導き、2015年には得点王に輝いた。その活躍に目を付けたJ3鹿児島ユナイテッドからオファーが届き、2016年に移籍すると、1年目に27試合で15得点を挙げて得点王を獲得。さらに、翌年は30試合で24得点と、圧倒的な得点力で2年連続のタイトルを手にした。
◆4つのカテゴリーで開幕弾
アマチュアのJFLからプロのJ3。そして、次のステップはJ2だった。2018年、得点力不足を課題にしていた大分トリニータに移籍。背番号「10」を託され、26試合でチームトップタイの12得点。ここでもFWとして結果を残し、チームのJ1昇格に貢献した。
2019年からはJ1の舞台へ。国内のトップリーグにも臆することなかった。開幕戦となった2月23日の鹿島アントラーズ戦に先発で出場すると、チームの全得点となる2ゴール。アウェーでカシマサポーターを沈黙させた。これでJFLから始まり、J3、J2、J1と4つのカテゴリーで開幕戦ゴールを決める快挙達成となった。
3月17日には、このシーズン優勝した横浜Fマリノスから2得点。3月までの5試合で5得点を記録し、2・3月の月間MVPに選ばれた。原博実委員からは「JFL、J3、J2、J1とステップアップしてきた苦労人。ゴール前でのポジション取りの巧みさ、多彩なシュートの種類。何より決定力が素晴らしい」と称えられた。
藤本は初のJ1で21試合8得点と存在感を見せると、シーズン途中にヴィッセル神戸からオファーが届いた。神戸には、バルセロナで数々のタイトルを手にし、スペイン代表でも唯一無二の存在だったイニエスタが在籍していた。藤本は移籍を決断し、背番号「9」を託された。
藤本は2012年にJFLでキャリアをスタートし、J1クラブの主力まで駆け上がった。ここまでのシンデレラストーリーは極めてまれで、多くの選手が競争に敗れていく。
今シーズンの神戸は、6勝5分け1敗の勝ち点23で5位。好位置につけているチームとは対照的に、昨シーズン28試合で6得点だった藤本は、いまだ無得点とやや出遅れている。しかし、今まで数々の逆境を乗り越え、周囲を驚かす活躍を見せてきた藤本のストーリーは、これで終わらないだろう。
スポーツメディア「New Road」編集部
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