働き方の多様化などに伴い、よく耳にするようになったワーケーション。「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた言葉で、観光地などで仕事しながら休暇も楽しむというものだ。企業のテレワーク化が進んだことで、ワーケーションを実現しやすい環境は増えてきているようだ。

私は独立して以来、いわゆるワーケーションを行ってきた。出張に子どもを連れて行ってレジャーを楽しんだり、旅行中に家族が寝ている時間で仕事したり。特に私は走ることが趣味であり仕事なので、出張先でもランニングウェアは必需品。旅ランや島ランが大好きで、時間さえあればパソコンを背負い気になる場所へ走りに出かけてきた。私のようにスポーツが趣味という方なら、ワーケーションでも“運動できること”はとても大切だろう。

そんな中、昨年末に訪れた北海道ニセコ町が、まさにスポーツ好きにおすすめのワーケーションスポットだった。どんなワーケーションが楽しめたのか、その体験をご紹介しよう。

目次

パウダースノーで最高のスキー体験

冬の北海道と言えば、やはりスキーやスノーボードが思い浮かぶだろう。今回のワーケーションは1週間の滞在だったが、2日間は朝から夕方までスキーを満喫させてもらった。私は東北出身なので小さい頃はよくスキーしていたが、もはや20年以上も前の話。さらに何を隠そう、子ども達はこれが人生初となるスキーである。

ワーケーションはニセコ町の取り組むモデル事業。バーチャルオフィス事業を手掛ける株式会社ワンストップビジネスサービスが企画・運営等を支援し、さらにニセコ中央倉庫群や地域おこし協力隊が現地でアテンドしてくれた。スキーは子ども達を見切れるか少々不安だったのだが、なんと特別にインストラクターが付くという待遇。お陰さまで、家族みんな存分に楽しみ上達できた。

利用したのは「ニセコ モイワ スキーリゾート」で、ニセコエリアの数あるスキー場の中でも初心者におすすめとのこと。最初は長男・次男と私だけスキーで三男・娘は妻とのソリ遊びに分かれたが、すぐ三男も「スキーやってみたい」とこちらに合流した。ちなみにソリエリアの利用は無料で、しかも滑るのに坂の上へ行くための動く歩道も用意されていた。見晴らしが良く、飽きれば近くに暖かい休憩所があるのも子連れには嬉しい。

私は最初こそ戸惑ったものの、15分ほど滑れば感覚を取り戻せた。そこまで上手というわけではないものの、こうなるとどんどん滑りたくなる。子ども達をサポートしつつ、隙を見て中級コースを一人で滑らせてもらった。スポーツに熱中すると、やはり童心に返ったようにはしゃいでしまう。これがスキーに限らず、スポーツの魅力なのかもしれない。

子ども達もインストラクターのお陰もあり、メキメキ上達していくのが分かる。ふかふかのパウダースノーは転んでもまったく痛くないので、思い切りコケながら覚えられるのも良いのだろう。なんなら長男は上手く止まれずスピードが速くなると、諦めて雪の積もっている方へ進んで転びながら止まっていた。最終的に長男と次男は、初級者コースを一人で止まったり転んだりすることなく滑り切れるほどに。三男はインストラクターと一緒に滑っていたが、疲れることすら忘れて最後まで楽しんでいるようだった。

もちろんワーケーションなので、スキー中も多少は仕事を。休憩所にも机はあるがWi-Fiがなく、しかもテザリングしようとしたら電波が弱い。しかし歩いて行ける食堂はWi-Fi完備で、良いワークスペースとして利用させてもらった。ワーケーションは完全な休みではないので、やはりいくら事前に調整しても突然仕事が舞い込むことが考えられる。こうした際、スキー場すぐに仕事できる場所があることは、非常に恵まれた環境と言えるだろう。

子どもと一緒に雪上ランニング

ニセコ町に滞在中、2回だけだが陸上競技部に所属する長男とランニングした。ランニングシューズに簡易的なスパイクを装着するだけで、実に快適に走れる。滑りやすい、あるいはフカフカに雪が積もった路面は自然と丁寧に走るようになり、ランニングフォームの矯正にも繋がりそうだ。

いくらスキーなどで身体を動かしても、やはり走らなければ走力は落ちてしまう。私はもちろん長男は競技として取り組む選手なので、やはりそれに合ったトレーニングは欠かせない。正直に言って最初は「さすがに走れないか」と思っていたのだが、意外と快適に走ることができ、むしろ雪上という環境だからこそ色んな気づきを得ながらトレーニングできた。長男も最初は寒いからと躊躇していたが、すぐ楽しくなったようだ。

また、なんと現地でアテンドしてくれた地域おこし協力隊の方がランナーだと知り、2回のうち1回は一緒に走らせてもらった。見知らぬ地でも繋がりができるのは、スポーツの素晴らしいところだろう。現地の方は付近のことを知り尽くしているので、「こういう場所が走りたい」「これくらい走りたい」など伝えるとすぐコースを頭の中で描いてくれる。ランニング好きな方には、ぜひワーケーションの際にも一緒に走れる地元の方を探してみてほしい。

毎朝の雪かきが一番の運動

ニセコ町の冬は、生活そのものが運動と言っても過言ではない。滞在中も朝起きれば宿の外が雪だらけ。毎朝、1日は雪かきから始まった。子ども達はいつの間にか雪かきが雪遊びに変わっていくのだが、お陰で空腹になり朝食が美味しい。もちろん大変ではあるものの、雪かきの疲労もニセコ町のような地域だからこそ体験できる貴重なもの。子ども達も雪が楽しいからか、いつも率先して手伝ってくれた。

なお、朝に限らず雪は降り続けるため、車は乗るたびに雪下ろしが必要だ。フロントガラスはもちろん、車体上の雪も下ろしておかないと危ない(運転中にフロントガラスに落ちてきて見えなくなる)。フロントガラスは雪だけでなく、凍り付いてしまっていることもあるだろう。駐停車の際にはワイパーを上げておき、運転する少し前にエンジンを掛けておくのが基本。レンタカーを利用するなら、雪下ろしに必要なブラシなどを一緒に借りると良いだろう。

疲れた身体を癒す温泉

スポーツと仕事は、どちらも1日の終わりには心身に疲れが出る。そんな疲れを癒してくれたのが、ニセコ町にたくさん点在する温泉だ。それぞれ泉質が異なり、訪れた温泉はすべてサウナ付き。露天風呂もあり、雪に降られながら入るのは非日常的で大好きな時間だった。外気が寒いので長湯してものぼせにくい。滞在中は5つの温泉を訪れたが、「今日はどこに行こうか」と考えるのも1つの楽しみとなるだろう。温浴は疲労回復にも効果的だし、まさにスポーツを軸としたワーケーションには最高だ。

雪に慣れていない人ならば、ニセコ町でのワーケーションはちょっと躊躇してしまう部分があるかもしれない。確かに雪かきは大変だし、運転など気を遣うことはたくさんある。しかし実際に滞在してみれば、ニセコ町のファンになる人は少なくないはずだ。少なくとも私のようにスポーツ好きな人、あるいは運動大好きな育ちざかりの子どものいる人にとって、ニセコ町はとてもおすすめできるワーケーションスポットだった。夏になれば、今度は山登りやアスレチックなど違った楽しみがあるとのこと。機会があれば是非ともトレイルランニングの装備を持って訪れ、冬とは異なるニセコ町を満喫しながらワーケーションしてみたい。

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[著者プロフィール]

三河 賢文(みかわ まさふみ)
New Road編集長。“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。
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By New Road 編集部

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