新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国で数多くのマラソン大会が開催を見送っていた。中には、そのまま大会が無くなってしまった…というものも。しかし、2022年に入って少し状況に変化が見られ、少しずつ再開するマラソン大会が出始めている。走ること自体は一人でもできるが、やはり大会は別物だろう。他ランナーと切磋琢磨して自己ベストを狙ったり、仲間と楽しく走ったりするのは楽しいものだ。
一方、中には感染予防の観点から、まだ参加に一歩踏み切れないという方もいる。実際、再開した大会にも思うように参加者が集まらず、苦戦しているケースが少なくない。
しかし、マラソン大会で感染拡大したという話は、恐らくほとんど耳にしたことがないだろう。運営側はできる限りの感染対策を講じているし、屋外という環境もあって、感染リスクは低いのかもしれない。私自身、2022年に入って複数の大会に出場しているし、運営側でも携わってきた。では、マラソン大会ではどのような感染対策が行われているのか。大会によって違いはあるが、主なものをご紹介しよう。大会出場を迷われている方は、一つの判断材料として参考にしてほしい。
目次
事前の体調チェック
多くの場合、1~2週間前からの体調チェックが求められる。内容は日々の体温記録、そして体調に関する質問項目への回答だ。紙を印刷(もしくは送付)して記載するものもあれば、専用のスマホアプリ等で記録するものもある。
もちろん、前日受付時や大会当日も検温と体調チェックを実施。もし体温が高かったり体調不良があったり、あるいは感染・接触歴があったりすれば、残念ながら大会には参加できない。場合によって「前日や当日になって参加NGになる」という可能性がゼロではない点は、あらかじめ頭に入れておきたい。
ワクチン接種
新型コロナウイルスのワクチン接種が必要という大会もある。本記事の執筆時点では、3回接種がラインということが多いだろう。必須ではなく推奨とする大会もあるが、別でPCR検査などが求められるかもしれない。この場合、検査費用は自己負担になるので注意しよう。
抗体検査
大規模な大会になると、抗体検査を実施するケースも。私が出場した大会では、「仙台国際ハーフマラソン」で全参加者を対象に行われた。事前に検査キットが郵送されてきて、各自検査のうえ陰性であることを証明するというものだ。ちなみに同大会では検査結果を撮影し、専用アプリで画像をアップロードする方式だった。
大会当日の対策
大会当日も、感染対策のため色々な対応が求められる。主なものとしては、以下のような内容が挙げられるだろう。
- 会場入口等で検温&消毒
- スタート直前までマスク着用
- ゴール後のマスク着用(マスク配布が多い)
- 少数毎のウェーブスタート
- 運営スタッフ、ボランティア側のマスクや手袋等の着用 など
このほか、エイドステーションにおける水分・補給食の提供にも変化が見られる。例えば水分はコップに注がれず、ペットボトルのまま提供されることも。また、食べ物は個包装のみだったり、ファンラン大会では取る前の消毒を求められたりすることもある。
なお、中には前夜祭やゴール後の飲食が行われる大会もあるが、基本的には中止というケースが多い。これは、密になる可能性が高いからだろう。他にも大会ごと指示される内容が異なるので、大会概要は事前にチェックしておきたい。
エントリー費と返金規定
エントリーを悩むランナーにとって、1つ気になるのがエントリー費だろう。距離や規模などによってエントリー費は異なるが、実際のところ“これまで通り”とはいかないようだ。多くの大会では、コロナ禍以前と比べて費用が上がっている。いくつかの大会を例にとって、2019年と2022~2023年との費用を比較してみよう。
大会名 | 距離 | 2019年 | 2022年/2023年 |
---|---|---|---|
板橋Cityマラソン | ハーフマラソン | 6,500円 | 11,550円 |
東京マラソン | フルマラソン | 10,800円 | 23,300円 |
大阪マラソン | フルマラソン | 10,800円 | 23,000円 |
ハセツネCUP | 71.5km(トレイル) | 15,000円 | 22,000円 |
柴又100K | 100km | 22,000円 | 30,000円 |
中には2倍以上のエントリー費となっている大会もあり、参加を躊躇してしまう気持ちも分かるだろう。ただし、これには例えば抗体検査やその他の感染対策など、過去実施時には発生しなかった運営・準備費も含まれている。私自身、大会運営側に立つこともあるが、参加者の安全確保を考えるとやむを得ない事情があるのも事実だ。
なお、大会中止時の返金についても気になるところだろう。コロナ禍で大会中止が相次いだ時期には、大会ごとに対応が大きく異なり不満の声も聞かれた。現状、多くの大会では中止時に返金が行われている。経費等を差し引いた金額であることが一般的だが、準備が進むほど経費が掛かるため、早めの段階で開催可否を判断する大会も多い。万が一、中止となってしまっても、参加者の負担はできる限り抑えらえていると言えるだろう。ただし、細かな規定は大会毎に異なるので、必ず事前に対応を確認しておきたい。
大会後の感染報告
大会終了後、もし新型コロナウイルスに感染した場合には、運営者に対して報告を求められることもある。逆に2週間を目安として、参加者から何も報告がなかった場合には、その旨を参加者に対して通知してくれる大会もあるようだ。
お互いの配慮で安心安全な大会を
このように各大会では、さまざまな感染対策が講じられている。いずれの大会も運営者が頭を悩ませながら、なんとか安全を確保しつつ開催しようと考えているのだ。もちろん、現在も中止を決断する大会はあるが、それも仕方ないことなのだろう。大会運営者だけでなく、自治体等の見解が開催可否に影響することもある。
もちろん、最終的に参加するかどうかを決めるのは各個人だ。感染リスクを考えれば、「絶対にゼロ」ということは難しい。しかし、規定された対応に則れば、おおむね安心して大会を楽しむことができるのではないだろうか。大切なのは主催者の意図を汲んでルールを守り、参加者同士も含めてお互いが安心安全のために配慮すること。筆者としては開催してくれる主催者に感謝しつつ、改めて各地のマラソン大会を楽しみたいと考えている。
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。