9月からトライアスロンも後半シーズンが始まりました。実のところ、トライアスロンは毎週世界のどこかで大会が開かれていると言われるほど、シーズンが長くレースも多いのです。しかし、そんな中でも1・2・8・12月は大きなレースが開かれることが少なく、だいたい8月を中心にして3~7月を前半シーズン、9~11月を後半シーズンとし、トレーニングやレースのスケジュールを立てる選手が多く見られます。そんな私も、9月から11月までにかけた期間を後半シーズンとしてスケジュールを組んできました。
年間さまざまな国や地域で開かれる世界ランキング対象大会ですが、大会当日のスケジュールはほぼ同じような時間間隔となっています。今回は、そんな大会の公式日程(オフィシャルスケジュール)と、選手がどのような感じで当日のレースを迎えるのかをご紹介します。
目次
大会1週間前
「スタートリスト確定」
トライアスロンは大会へ申込んだ選手のうち、世界ランキングがより上位の選手ほど若いレースナンバーを付与されます。しかし、冒頭で述べた通り毎週のように世界のどこかで大会が開かれ、世界ランキングが変動する競技です。そのため、自分のレースナンバーが確定するのは大会の1週間前の週末が終わり、その時点での世界ランキングが確定してからになります。この時点で、選手側として特に何かすることはありません。しかし、だいたい自分がどれくらいの立ち位置なのかがわかるようになります。
大会1~2日前
「公式練習(familiarization)」
大会主催者先導のもと、レースコースの試走を行うことができます。多くの場合、交通規制などを行って本番さながらの状況下で練習ができるので、コースの危険箇所や仕掛けどころなどを確認することが可能です。特にバイクコースは、危険箇所の確認がそのままレース中の事故防止に繋がります。ここでの試走は、安全にレースを行うためにも重要になってくるのです。
「ブリーフィング(競技説明会)」
公式練習と並行して、大会主催者から競技説明があります。公式練習と違って、このブリーフィングはルールで選手の出席が義務となっており、違反するとペナルティを課せられます。このブリーフィングで行われるのは、主にコース説明やルール説明、大会スケジュールの確認など。当日のスケジュールが、ここで変わることもあるので注意が必要です。
ちなみに、恐らくこれもルールなのですが、世界中どこで開かれる際もブリーフィングは全編英語です。最低でも聴き取れるくらいの英語力がないと、「変更点がわからなくて時間に遅れた…」なんてことがあるかもしれません。私は英語が堪能ではないので、毎回ブリーフィングの最中は聞き漏らしのないようかなり集中しています。
「レースパッケージ受取」
自転車やヘルメットに貼るレースナンバーシールやアスリートID(当日大会会場に入場するのに使う)などが、一つにまとまったパックを受け取ります。大抵の場合、ブリーフィング終了時に部屋から退出する際に選手達にそれぞれ配られます。
「記者会見」
大会によっては、有力選手に対して記者会見を行うことがあります。私は国内の大会ですが、過去に一度だけ記者会見に出たことがあります。ただ、緊張して上手く喋れませんでした。
大会当日
「アスリートラウンジ開放」スタート約1~2時間前
アスリートラウンジとは、選手が荷物を置いたり着替えたりするスペースのこと。外からは見えないようになっていて、選手のみしか入れないようになっています。入場の際に当日の出走受付(チェックイン)も済ませることになるので、選手はスタート前に必ず立ち寄らなければなりません。
「トランジッションエリア開放」スタート約1時間前
トランジッションエリアが開放され、競技のためにバイクやランニングシューズのセットが出来るようになります。大会によっては他のカテゴリーとの兼ね合いで、この時間がギリギリになったり、かなり早まったりします。アスリートラウンジとトランジッションエリアの開放時間に関しては、ブリーフィングの際にもっとも確認しなければならないことかもしれません。この時間を間違えると、レースに出走できなくなります。
ちなみに、トランジッションエリアはセットを開始するのに混み合うことが、ごく稀にあります。そのため、私はいつも時間に余裕を持ってトランジッションエリアに向かうようにしています。
「スイムウォーミングアップ開始」スタート約30分前
バイクやランニングと違って、スイムはライフセーバーがいないと泳ぐことができません。そのため、ウォーミングアップの時間が決められています。スタート直前に定められていることもあり、最近はスイムウォーミングアップを行わない選手も少なくありません。これは、濡れることでスタート前に体が冷えてしまうのを防ぐためだそうです。
「ラインナップ(点呼)」スタート10分前
スタート約10分前になると点呼が始まり、レースナンバー1番の選手から順に並んでいきます。
「スタートグリッド選択」スタート5分前
レースナンバー1番の選手から、順番にスタート位置を決めて行きます。スタート位置はスイムコースに対して横一線に場所が人数分用意されており、それを選手が決めていく形です。つまり、レースナンバー1番の選手が、もっとも自由にスタート位置を決められます。
世界ランキングポイント対象大会は、大抵このような流れでスケジュールが決まっています。ここに、選手によって現地入りの日があり、大会当日までの練習があり、当日のウォーミングアップの時間があり…という感じで大会は動いていくのです。大会スケジュールありきで、自分のスケジュールを組み立てて行くことになります。そのため、タイムマネジメント能力も含めて、レース直前まで各選手の実力が試される競技だと思います。
近年、日本で開催される世界ランキングポイント対象大会は激減してしまいました。それでも、まだ毎年5月には横浜にシリーズ戦がやってきます。もし機会があれば、今回ご紹介した内容を参考に「今、選手達は何の準備をしているのか?」なんて観戦の仕方をしてみても面白いかもしれません。
1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。
<主な戦績>
2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝
2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝
2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位
2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位
2021年「日本トライアスロン選手権」4位