クロスフィットの年間競技スケジュールは、2~3月のオンライン参加型イベント「クロスフィット・オープン」(通称:オープン)で始まる。3~5週間に渡って行われ、毎週異なったワークアウトを指定されるが、その内容は直前まで極秘だ。そのため、次のワークアウトを予想することが参加者の大きな楽しみになる。

新型コロナウィルスのパンデミックが世界中で猛威を振るっていた2021年度のオープンでは、第1週目に先立って行われたワークアウトの発表がクロスフィッターたちを驚かせた。なぜなら、それまでオープン競技種目になったことがなかった「ウォール・ウォーク」(壁歩き)という動作がワークアウトに含まれていたからだ。今回は、この「ウォール・ウォーク」というトレーニングについて詳しくご紹介しよう。

クロスフィット・オープン公式サイトによるワークアウト21.1の説明

 

目次

ウォール・ウォークのやり方

1)床にうつ伏せの姿勢で開始し、つま先を壁につける。

胸と太股前面を完全に床につけ、両手は肩の外に置く

2)両腕を伸ばし、手を壁に向かって歩くとともに、壁を歩くように上に登っていく。

両肘を伸ばし、体幹を安定させることに注意する

3)壁に向かって逆立ちの姿勢になる。

可能な限り壁に近づき、垂直に近い体勢で静止する

4)1~3と逆の動きで元の姿勢に戻る

下りるときに膝を床で強打しないように注意する

ウォール・ウォークの効果

ご覧いただくと分かる通り、ウォール・ウォークの動作自体は決して複雑なものではないし、難易度もそれほど高くはない。もともとは、逆立ち腕立て伏せや逆立ち歩行ができない人のための練習用の動作として使われていたくらいだ。1回だけなら、問題なくこなせる人は多いだろう。

しかし、これを何回か繰り返すと、見た目よりはるかに体力を消耗する動作であることが分かる。前述のオープン12.1では、このウォール・ウォークの回数を1-3-6-9-15-21とラウンドごとに増やしていった。つまり、合計55回ということになる。最初の数ラウンド(1,3,6回)は楽にこなせても、途中からは腕や肩がパンパンに張り、息も絶え絶えになったクロスフィッターは数多い。筆者もそのひとりだ。自信がある人は、ぜひ試してみてほしい。

このウォール・ウォークを競技ではなくトレーニングとして取り組むことには、以下のメリットが考えられる。

  • 上半身全体の筋持久力を向上させる
  • 体幹部分の安定性とバランスを向上させる
  • 逆立ちの姿勢に慣れる

逆立ち腕立て伏せや逆立ち歩行のような体操系の動作は、初心者には練習が難しい。1回も動作できなければ、技術の習得に不可欠な反復練習も、基礎となる筋力の向上もできないからだ。しかし、ウォール・ウォークはその部分を埋めることができる。

ウォール・ウォークを応用、発展させるトレーニング方法

ウォール・ウォークにはシンプルな動作であるということだけでなく、特別な器具も広いスペースも必要としないという長所もある。そのため、自宅で行うことも可能だろう。その点、非常に優れた自重エクササイズだと言える。

このウォール・ウォークを単体で行ってもよいが、他のワークアウトと組み合わせることで、さらにそのトレーニング効果は高まる。例えば、ダンベルやバーベルを用いたショルダープレスとウォール・ウォークを交互に行うと、肩周りを集中して鍛えることが可能だ。あるいは、自重エクササイズの特長を活かして、下半身を鍛えるエアースクワットと上半身を鍛えるウォール・ウォークを組み合わせると、ほぼ全身の筋肉群を一度に鍛えることができる。

クロスフィットでは、いくつかの異なった動作をセットにして行うことが前提としてある。そのため、ウォール・ウォーク以外にも比較的シンプルで難易度が低く、しかし応用や発展がしやすい種目を多く取り入れている。縄登り、バーピー、2重跳び、ウォール・ボールなどは、その例として挙げられるだろう。興味のある人は、クロスフィットを試してみてはどうだろうか。

By 角谷 剛 (かくたに ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。