2022年11月20日(日)、愛知県知多市で『ちた梅子マラソン』が初開催された。本来であれば2020年からスタートする予定が、新型コロナウイルスの影響から延期が続いていた本大会。運営側としては、恐らく念願の開催となったころだろう。種目は3km(中学生)・5km・10km・ジョギング2.5kmの2つ。今回、10kmに出走機会をいただいた。どのような大会だったのが、写真と共に詳しくご紹介しよう。
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アップダウンの多い走りごたえあるコース
大会には知多市をはじめ、近隣エリアからたくさんのランナーが参加。曇り空だが、気温が程よく走るには最適なコンディションだった。中には遠方から訪れた方もいたようで、“初開催”のレース出場はそれだけで魅力的なのかもしれない。
コース上には1km毎に距離表示が設けられている。10kmだと時計をあまり見ず集中して記録を狙いたい、あるいは練習がジョギング程度でGPSウォッチなど持っていない方も多そうなので、細かな距離表示はありがたいのではないだろうか。
本大会の特徴が厳しいアップダウンだ。フラットな場所が空くなく、序盤から緩やかなアップダウンが選手たちを揺さぶる。最初の元気なうちは勢いよく走ってしまうが、無理すると後半に疲労が残って失速の原因になるだろう。ペースコントロールや走り方の切り替えが難しく、意外とテクニカルなコースで走りごたえがある。
ちょっと驚いたのが、3.5kmほどでスタート地点に一度戻ってくること。なんとなく見慣れた景色だな…と思っていたら、スタートゲートが目の前に現れて驚いた。スタート付近は応援も多いため、「身体が温まって、ここから行くぞ!」というタイミングで声援を受けられたのは嬉しい。
容赦なく何度も訪れる登り坂。もちろん登った分だけ下るのだが、アップダウンの繰り返しはジワジワとランナーを苦しめる。坂道を見るなり「また登りか~」と声を出すランナーもおり、身体の疲労はもちろん、精神的にもタフさが求められるコースだった。
5kmを過ぎた辺りで折り返しポイントがある。広くない道だが、スタート地点至近の場所ということもあって、たくさんの人々が声援と拍手で迎えてくれた。他ランナーとすれ違えるので、仲間同士で「ファイト!」などと声を掛け合う場面も。懸命に走る他ランナーの姿を見られるのは、自分も頑張ろうという刺激になる。
以降も7km手前頃までは折り返しコースになっていて、ちょうど先頭を走るランナーの走りも見られた。10kmの大会ということで、フルマラソンなどと比べてペースが速く迫力あり。特に下り坂ではハイペースで走ってくるので、そのスピード感に多くの方々が走りながらも目を奪われたことだろう。登り坂ではすれ違うランナーの走りを見ていると、気が紛れてちょっと身体が楽になる。
もっとも印象に残ったのが、ゴール直前で渡る『佐布里橋』。後で改めてご紹介するが、端からの景色が素晴らしかった。後続ランナーとのすれ違いもあり、ゴール直前ながら「自分も力を出し切るぞ!」という気持ちが沸き上がってくる。この橋を渡り切れば、その先がいよいよ『佐布里緑と花のふれあい公園』内にあるゴールだ。
そして10kmを走り終え、ついにゴール!手前から道に沿って応援の方々がたくさんいらっしゃり、「おかえりなさい」「お疲れさま」「ナイスラン」など声を掛けてくれました。ちゃんと一人一人、ゴールテープを貼って迎えてくれるのも嬉しいポイント。手作り感がありながら、とても心温かな大会でした。坂道が続いて思った以上に疲れましたが、それすら吹き飛ぶ充実感です。
しかし本大会、特徴はアップダウン多めでタフなコースだけではありません。続いて、走りながら目にした素敵な景色をご覧ください。
自然豊かで清々しいコース風景
大会のコースは『佐布里緑と花のふれあい公園』を発着点とし、その多くが佐布里池の周辺を走ります。そのため、何度も広々とした佐布里池が見られ、波紋1つ立っていないその景色にはたびたび目を奪われました。水がキレイだからか、空や周辺の木々がそのまま水面に映し出されています。
同じ佐布里池でも、場所によって光景は異なります。先ほどの写真は緑に囲まれていましたが、二度通ることになる佐布里橋から見ると木々が遠くて水面がより広く見えます。橋周辺には応援の方がいなかったこともあり、とっても静か。そのため、息を弾ませながら走っているのに時間が止まったかのような、不思議な感覚を得ました。
そして、後半に走るのが田んぼ道。きっと、地元の方から見れば何でもない光景でしょう。しかし、他地域から来た方であれば、こういう良い意味で“田舎らしさ”を持った場所はとても貴重。のどかで非日常感があり、訪れた甲斐があるというものです。自然いっぱいのコースは走っていて心地よく、新鮮な空気をたくさん吸い込んでリフレッシュできました。
全種目のゴールが一緒で応援しやすい!
個人的にとても良かったのが、すべての種目でゴールが同じだということ。10kmを走り終えて少し休んでいると、ほどなくしてジョギング2.8kmの方々が走ってきました。中には小さな子供たちも含まれており、その姿にちょっとほっこり。「あとちょっとでゴール見えるよ!」と声を掛けるとラストスパートする子供たちの走りは、とても可愛らしく楽しい時間になりました。
例えば誰かと一緒に別種目で出場した際にも、ゴールが同じなら応援したり合流したりしやすいので便利。時間も上手く種目別に異なっているので、家族や仲間で参加しやすい大会ではないでしょうか。スタート地点も近いため、5km走ってから子供と合流して、さらにジョギング2.8kmを一緒に走る…なんていうことも可能だったのかもしれません。
ちなみに大会名を聞いて、「梅子って何?」と思われる方がいるかもしれません。こちらが完走証ですが、中央に描かれている可愛らしい女の子が分かるでしょうか。これが、佐布里(そうり)梅から生まれたという知多市の公認キャラクター『梅子』です。残念ながら会場に梅子の姿はありませんでしたが、ちゃんと走った後には、完走証の中でその笑顔を見せてくれました。
荷物預かりからスタート誘導、そしてゴールまで。初開催ではありますが、とてもスムーズに走ることができました。知多市は中部国際空港からも近いですし、少し移動すればレゴランドもあります。そのため、県外から観光がてら大会を走りに訪れるのも良さそう。ご興味のある方は来年の開催に向けて、ぜひ公式ホームページをチェックしてみてください。
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。