剣道を習い始めた初心者は、いったいどのような稽古を行うのでしょうか。これから剣道を習い始めようと考えている、あるいは、お子さんの習い事に剣道を取り入れるか検討されている方にとっては、とても気になるところだと思います。水泳の初心者がスイミングスクールに通い始めた場合、いきなり泳ぎ方を叩き込まれる…なんてことはありません。そんなことをしたら、泳ぐことへの恐怖心が強くなってしまい、かえって泳げなくなりそうです。そのため、まずは水に慣れるところから始めるのが一般的でしょう。これは剣道だって同じこと。まずは、剣道の雰囲気に慣れてもらうことから始まります。いきなり相手と打ち合ったり、勝負したりなんてことはありませんから安心して下さい。
今回は、剣道の初心者がどのような稽古を行うのかご紹介します。剣道を習い始めようとしている方の不安を取り除く、一助となれば幸いです。
目次
剣道を始めるための準備
まずは、剣道を習う道場や教室を探します。これが決まったら、いよいよ剣士への道の始まりです。最初に、稽古を行うときの服装を確認しておきましょう。
剣道は剣道着と袴を着用して稽古を行います。ただし、習い初めから剣道着や袴を用意する必要はありません。最初はジャージなどの動きやすい服装で大丈夫。また、剣道の稽古は常に裸足で行いますから、靴も靴下も不要です。剣道着や袴、防具など、剣道には必要なものがいくつかありますが、それらは習い始めてすぐに揃えなくても問題なし。初心者の稽古は竹刀があれば成立しますから、竹刀以外は徐々に揃えて下さい。なお、竹刀の購入は指導者に確認しましょう。
稽古の流れ
準備運動が済んだら稽古開始です。初心者が行う稽古は、主に次の4つに大別されます。
- 礼法や関連する作法
- 足さばき
- 竹刀の持ち方・振り方
- 見取り稽古
順番に、詳しくご説明します。
礼法や関連する作法
剣道は「礼に始まり礼に終わる」と言われます。初心者は、最初に剣道の礼法や関連する作法を学ぶことになるでしょう。立礼や座礼、座り方や立ち方など、それらの意味合いも含めて詳しく指導してもらえると思います。椅子やソファーに座ることが多い現代では、日常の中で座礼をする機会はほとんどないでしょう。だからこそ、できるとカッコイイと思いませんか?剣道の稽古は、武士の習慣を学ぶ場でもあります。
座り方や立ち方にも意味がありますから、礼法や作法の学びはきっと面白いと感じるはず。例えば皆さんは、正座したり正座から立ち上がったりするときに、左右どちらの足から動作を起こしますか?実は、そのような細かいことにも、剣道では意味があるのです。
足さばき
次に「足さばき」という足遣いを練習します。足さばきの練習は、ラダートレーニングのような練習を想像するとわかりやすいでしょう。足さばきの練習ではラダー(はしご)こそ使いませんが、同じように足に意識を向けて練習します。
剣道の構えは基本的に右足が常に前、左足が常に後です。構えた状態のまま前進するとき、左足は右足を追い越しません。日常の歩行とは異なりますね。足さばきの練習は、剣道の独特な足遣いに慣れるための練習です。余談ですが、剣道の足さばきが身につくと、人混みでとっさに人を避ける時にも役立つんですよ。
竹刀の持ち方・振り方
続いて、実際に竹刀を持ちます。竹刀を持つと、剣士になった気分がますます高まるはずです。竹刀を振り回したくなる気持ちを抑えて、竹刀の持ち方から教わります。竹刀を相手に向けて構えたときは、右手が前で左手が後。握り方も詳しく教えてもらってから、竹刀を振る練習に移りましょう。竹刀を振る練習は「素振り」と言います。素振りは、剣道の稽古を重ねていく上で非常に大切な練習。ポイントをしっかり教わり、修得を目指しましょう。
見取り稽古
最後にご紹介するのが「見取り稽古」です。先生をはじめとした、経験者の稽古を見学します。何事も、学ぶための近道は真似ること。経験者が稽古している姿を見るのも、上達に向けた効果的な練習と言えます。近い将来、ご自身も一緒に稽古するようになるでしょう。その日をイメージしながら、経験者の稽古を見学して下さい。
以上が、剣道を習い始めた初心者が最初に行う稽古内容です。剣道を習い始める道場や教室によって、教わる順番は前後するかもしれません。ただし、ほとんどの場合、この4つの練習から始めることになると思います。
剣道の稽古には「練習がキツそう」「先生が怖そう」「打たれると痛そう」など、ネガティブなイメージを持つ方が少なからずいるようです。しかし、初心者の時点から、キツかったり怖かったりという思いをすることはありません。もちろん、竹刀で叩かれることもありません。安全かつ楽しく剣道を学ぶためのステップが用意されていますから、安心して剣道を習い始めて下さい。
剣道は基礎が大切
今回ご紹介した練習に慣れた頃には、きっと剣道着や袴を身に着けたくなっていることでしょう。購入にあたっては、周りの経験者が手厚くサポートしてくれるはずですので、この点も心配無用です。
なお、剣道の初心者が最初に行う稽古をご紹介しましたが、これらは初心者用の練習メニューというわけではありません。剣道では高段者であっても、初心者と同じように素振りや足さばきの練習を行います。私自身も、素振りや足さばきの練習は意識的に行うよう心掛けています。剣道では、何歳になっても何段になっても、基礎が大切ということですね。剣道は習い始めたその日から、真髄を学んでいると言えるのかもしれません。
剣道LABO®︎代表・剣道ファシリテーター。自身の剣道経験と映像編集技術を駆使し、社会人剣道家の上達をマンツーマンでサポートしている。東京・神奈川・千葉・埼玉にクライアント多数。全日本剣道連盟 錬士七段。1976年生まれ。