重量プレートを両端に付けたバーベルを肩に担いで屈伸するバックスクワットは、「筋トレの王様」と呼ばれることがある。下半身全体を満遍なく鍛えられるし、重量負荷を調整することも容易だ。さらに、バックスクワットには腰や腹筋、背筋などの体幹部分を鍛える効果もある。重量に抵抗して、体が前後左右に傾かないよう体軸をまっすぐに保つ必要があるからだ。そうしてバランスを保ち、体を安定させるために動員される小さな筋肉群のことを「Stabilizer」と呼ぶ。
また、スナッチやクリーン&ジャークといった重量挙げ種目も、同じ理由で体幹を鍛える効果がある。どちらも動作の最後は、バーベルを頭上に持ち上げて静止することを求められるからだ。そのような理由から、体幹を鍛えるにはプランクに代表される「体幹トレーニング」よりも、バーベルを使った種目を行う方が、より効果的だと筆者は考えている。
ただし、これらの種目は体への負荷が大きいこと、そして正しいフォームを習得するまでに時間がかかることが、取り組むに当たってハードルになるときがある。筋トレを始めたばかりの初心者なら、なおさらだろう。こうした種目は筋力を鍛える以前に、スキルがあることが前提になってしまうからである。
そこで今回は、もう少し簡単な動作で体幹を鍛えられる、バーベルを用いたエクササイズをいくつかご紹介しよう。
目次
エクササイズ1:バーベル・ツイスト
バーベルの一方の端だけに重量プレートを付け、もう一方の端は床に置く。重量プレートが付いた端を両手で持ち、腰と肩を回して体の左右にバーベルを移動させる。
チェックポイント:
- 両足は肩幅
- 両腕を伸ばす(腕力に頼らない)
最初のうちは重量プレートを付けずに始めて、徐々に重量を増やしていくとよい。10回3セット程度がこなせる重量が目安である。なお、写真とは異なるが、壁のコーナーに重量プレートが付いていない端を固定させると、より安定性が増す。
エクササイズ2:バーベル・ロール・アウト
両端に重量プレートを付けたバーベルを床に置き、両手で握ったまま前方に転がして、体を前方にゆっくり伸ばす。これ以上伸ばせないという地点まで来たら、伸ばしたときと同じスピードを保って元の位置に戻る。腹筋ローラーと同じ動作だが、こちらは重量を増やすことで負荷を高めることができる。
チェックポイント
- ゆっくりとした一定のスピードを保つ
- 腹筋に力を入れて固める
- 両腕を伸ばす
- 腰を落とさない
写真では立った姿勢から行っているが、初心者は床に膝を付けて行うと、より安全に体幹を鍛えることができる。
エクササイズ3:バーベル・オーバーヘッド・キャリー
バーベルを頭上に持ち上げた状態で保持する。前述したStabilizerを鍛えるのに最適だ。この姿勢で静止しているだけでも効果があるが、もしスペースを確保できるなら、歩くとさらにバランスの向上に繋がる。
チェックポイント
- バーベルは頭の真上
- 両腕を伸ばす(肘をロックする)
- 腹筋に力を入れ、体軸をまっすぐに保つ
安全のため無理のない重量と時間設定で行う、あるいは重量プレートを付けなくても十分な効果が見込める。
エクササイズ4:バーベル・ヒップ・スラスト
ベンチに肩をつけて床に座り、バーベルを腰の前に置く。膝から肩までが一直線になるまで腰を上げ、数秒間停止した後、ゆっくりした動作で元の体勢に戻る。
チェックポイント
- 足の裏全体を床に固定させる
- 両膝は90度に曲げる
- ゆっくりとした一定のスピードを保つ
- 背中を反らさない
今回ご紹介したエクササイズの中では、もっとも重い重量を扱うことができる。瞬発力や爆発的なパワーを求めるアスリートにも向いたエクササイズだ。バックスクワットよりヒップスラストの方が、サッカー選手の短距離走スピードを高める効果があったとした研究(*1)もある。
その分、ヒップスラストは体にかかる負荷も大きい。そのため、最初は軽めの重量で動作に慣れて、少しずつ負荷を増やしていくことが望ましいだろう。反動をつけずに10回程度繰り返すことができる重量を目安にして、3~5セットほど行うとよい。
いずれのエクササイズも高いスキルは必要とせず、多くの方々にとって取り組みやすいものだ。初心者であれば、まずは重量プレートを付けず動作することで少しずつ慣れ、負荷を増やしていくと良い。体幹部の強化などに向けて、ぜひ取り組んでみてはいかがだろうか。
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。