「ループ・バンド」と呼ばれる太めのバンドを両膝の上あたりに着けて行うエクササイズを、アメリカのジムやスポーツの現場でよく目にするようになった。「ヒップ・バンド」「グルート・バンド」など他にもさまざまな呼び名があるが、ここでは「ループ・バンド」として統一する。ループ・バンドを用いることで以下のような効果があると謡われ、特にウォームアップに広く用いられるようになっている。

  • 可動域を広げる
  • インナーマッスルを強化する
  • 腰や膝などの痛みを軽減する

動作している間はずっとバンドの抵抗が作用しているので、体勢を維持するために体幹の強化が促進され、特に普段は意識することがない小さな筋肉群も動員することが可能。それでいて負荷を調整しやすく、関節に過度な負担がかからない。また、価格が安くて保管に場所を取らないことも、ループ・バンドの普及を後押しした長所のひとつだろう。ほとんどの製品はバンドの強度を色で分けているので、筋力とエクササイズの種類によって使用するバンドを選択できる。

目次

ウォームアップ

ループ・バンドを使ったウォームアップの例をご紹介しよう。特にスクワットやデッドリフトなど、下半身を中心とした筋トレ種目の前に有効だ。筆者は5~10分間ほどの有酸素運動を行ってから、ループ・バンドを用いるエクササイズに移行することが多い。ただし、いきなりそれを行っても問題はないだろう。下記すべてのエクササイズを行っても、所要時間は10分間を越えないはずだ。そのため、時間に余裕がないときのウォームアップにも向いている。

エクササイズ1:横方向へのステップ

両足を肩幅くらいに広げ、腰をやや落としたハーフスクワットのような姿勢から、膝を曲げたままで横方向に歩く。いわゆる「カニ歩き」だ。左右10歩程度。

エクササイズ2:縦方向へのステップ

1と同じ姿勢から、縦方向に歩く。片足をまず中央に寄せ、斜め前方に広げながら進む。前方に20歩ほど進んだ後、逆の動きで後ろ向きに歩いて元の位置に戻る。

エクササイズ3:スクワット

通常のフォームで行う自重スクワットと同じ動作だが、ループ・バンドの負荷に抵抗して、特に両膝が中に入らないように注意する。スクワットの姿勢が崩れがちな人にはフォームの矯正にも役立つ。ウォームアップ目的なら10回程度で十分だ。

エクササイズ4:グルート・ブリッジ

床に仰向けになって両足を腰の幅に置き、かかとをしっかり床に付ける。膝を直角に曲げた姿勢から、ゆっくりと腰を上げる。肩から膝までが一直線になるところで一旦停止し、両膝を少しだけ外に開く。逆の動作でゆっくりと元の姿勢に戻り、これを10回程度行う。片足を伸ばして行うと、負荷を高めることができる。

瞬発力トレーニング

エクササイズ1~4までの動作を終えると、かなり下半身全体の筋肉が温まっているはずだ。その後に行う本番トレーニングの種類によるが、ウォームアップとしてはほぼ十分な量だろう。

以下のエクササイズ5~7はウォームアップ動作とは異なり、すべてジャンプ動作を伴う。ループ・バンドの負荷に抵抗し、瞬発力を高めることを目的とするプライオメトリックス系のトレーニングだ。やや強度が高く、スピードとパワーが要求されるアスリート向けの動作になる。ループ・バンドを用いると、ボックスジャンプなどの一般的なプライオメトリックス種目と比べて、関節への負荷を軽減できることが大きな利点である。

エクササイズ5:ジャンピング・スクワット

スクワットでしゃがんだ姿勢からできるだけ高くジャンプし、同じ姿勢に戻る。リズミカルにホップするのではなく、一旦停止した状態から最大パワーでジャンプする。1セットは10回までとし、2~3セットほど行う。

エクササイズ6:スケーター

上半身を振る動きとタイミングを合わせて横に跳び、片足で着地する。一旦停止してバランスを取り、逆方向に同じ動きを繰り返す。両方向で20回程度を行う。距離やスピードが落ちるようなら回数を減らす。

エクササイズ7:180度回転ジャンピング・スクワット

エクササイズ5と同じように、スクワットでしゃがんだ姿勢からジャンプし、空中で横方向に180度回転してスクワットの姿勢で着地する。一旦停止後、逆方向に同じ動作を繰り返す。両方向で10回程度を行う。

By 角谷 剛 (かくたに ごう)

アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。

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