真夜中の東京都心部を走るウルトラマラソン大会をご存じだろうか?それが、5月27・28日に開催された「東京ウルトラマラソン2023」だ。スタートは夜22時の新宿御苑新宿門前。そこからオーバーナイト(夜通し)で約50kmの「夜の部」、さらに距離の長い約100kmの「フル部門」、そして翌朝からスタートする約50kmの「昼の部」がある。
10回目の開催となる本大会。今回、私は「夜の部」に参加させて頂いた。リピーターが多く出場するが、その魅力はどこにあるのか。コースや運営など、実際のレース模様をお届けしよう。
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真夜中の新宿御苑に集まる猛者たち
夜21時過ぎ頃、向かったのは新宿二丁目にある「Cocoさくら」というバー。この時点で、ちょっと他とは違う感じがする。周囲は22時になっても明るく、たくさんの人々が飲み歩く姿も。そんな中で、私は飲むでもなく走りに来たわけだ。バーが受付になっており、荷物を預けてスタート地点に向かう。
スタート地点は新宿御苑新宿門前。これから50kmあるいは100kmという距離を走るランナーが続々と集まっており、外から見れば異様な光景だっただろう。夜の部はこれから朝まで、フル部門はさらに昼頃まで走り続ける。
そして夜22時、ついに大会がスタート。特に号砲が鳴るわけではない。スタッフの声に合わせ、みんなでカウントダウンして「3、2、1…スタート!」で走り出した。夜とはいえ、この辺りは多少騒がしくても気にする人はいないようだ。大会というよりイベントというのに近く、一部を除いてゆっくり走り始める。和気あいあいとした雰囲気で手作り感があり、そしてスタッフとランナーから共に「楽しもう」という思いが伝わってくる。
都内名所と美しい夜景
コースは毎回変わるとのこと。これも、リピーターが多い理由なのかもしれない。ちなみに今回走ったのは、ざっくり以下のようなコースだった。交通規制などはないので、交通ルールを順守して信号はストップ。コース誘導などなく、ランナーは自分たちで地図を見ながら走る。
- 新宿御苑
- 六本木
- 浜松町
- 築地
- 葛西臨海公園
- 押上
- 浅草
- 上野
- 日本橋
- 皇居
- 新宿二丁目(ゴール:Cocoさくら)
まさに、東京都心の主要部をぐるりと巡るコースだ。東京タワーや国立競技場、東京スカイツリー、雷門、両国国技館など。さまざまな観光名所を経由するが、夜の姿を目にするのも珍しい経験である。
そしてレース中、たびたび目を惹かれたのが美しい夜景。夜が更けると共に少しずつ明かりが少なくなっていくが、つい足を止めて写真を撮ってしまった。周囲に人の姿は少なく、静けさが広がる。あまり目にすることのない東京の姿ではないだろうか。
手厚いエイドでのサポート
驚いたのが、飲食物を提供してくれるエイドだ。最初は16km、その後は約10km毎に設けられていたのだが、なんとキッチンカーで運営されていたのだ。そのため、食べ物はいずれも作りたてで温かい。しかも、一般的なマラソン大会と比べて、手の込んだ“料理”である。実はフル部門や昼の部の方が豪華だったようだが、私にとっては十分過ぎる充実ぶり。何を食べたのか、写真と共にご紹介しよう。
最初の辰巳にあるエイドで食べたのが「ホットドッグ」。小さく切られたものではなく、大きなソーセージの入った1本そのままだ。実は夕食を食べそびれていたので、一気に頬張って食べてしまった。
次のエイドは約27km地点の北砂。ホワイトボードには「ロールキャベツ」と書かれていたが、なんと提供されたのはご飯付き。ボリューム満点かつ熱々で食べるのに少し時間が掛かったが、後半に向けたエネルギー補給は完璧だ。
そして約38kmの上野、最後に頂いたのが冷たいそうめん。そして、おにぎりやナッツ、ドライフルーツなども提供されていた。エイド毎にエネルギー源となる炭水化物を補給でき、もちろん水分の提供もある。暑かったので私は飲まなかったが、スープなども頂けた。お陰さまで、補給食を持たなくてもエネルギー切れすることなく走り切れた。
さらにゴール地点でも、たくさんの食べ物や飲み物が。残念ながら私は運転を控えていたので飲めなかったが、なんと生ビールも飲むことができる。ゴールがバーという強みが、ここで発揮されていた。代わりに「アスリートコーラ」を頂いたが、色んな栄養が含まれていてパワーが出てくる感覚。フル部門を走る方々も、アスリートコーラを飲んで後半戦に臨んでいる方は多かった。
ちなみに本大会はエイド以外に、何か所か“通過しなくてはいけない”チェックポイントが設けられている。これは正しいコースを走ってもらうための工夫にもなっており、現地で写真を撮影し、ゴール後にチェックを受けなくてはいけない。
“夜の部”のチェックポイントは葛西臨海公園と東京スカイツリー、そして両国。経由することで観光要素が増す感じになっている。スタートが夜ということもあり、東京都外からでも当日入りで楽しめるのも良い。滅多に見ることのない真夜中の東京と走る「東京ウルトラマラソン」。スタッフの対応が温かく、また走りに来たいと思わせてくれる大会だった。興味を持たれた方は、ぜひ次回参加を検討してみてはいかがだろうか。
“走る”フリーライターとして、スポーツ分野を中心とした取材・執筆・編集を実施。自身もマラソンやトライアスロン競技に取り組むほか、学生時代の競技経験を活かした技術指導も担う。ランニングクラブ&レッスンサービス『WILD MOVE』を主宰し、子ども向けの運動教室やランナー向けのパーソナルトレーニングなども。4児の子持ち。ナレッジ・リンクス(株)代表。