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◆過去10年 パがセを圧倒
今年の日本シリーズでソフトバンクが2年連続で巨人に4連勝を飾った戦いぶりは大きな反響を呼んだ。過去10年でセリーグのチームが日本一に輝いたのは12年の巨人のみ。残りの9年はすべてパリーグのチームが制している。なぜ、このような現象が起きるのだろうか。現役時代に横浜(現DeNA)、西武の3球団でプレーし、現在クリケット選手として活動している木村昇吾は「フィジカルの強さ」を指摘する。
◆パワー+緻密さ
「ソフトバンクを筆頭にパリーグの選手は体が強いんです。広島から西武に移籍して衝撃を受けたのは振る力があること。山川穂高、中村剛也、森友哉…体がはちきれんばかりに振る。中距離打者の栗山巧も当てに行かずフルスイングする。フルスイングと言うと誰でもできると思いがちですが、オーバースイングとフルスイングは違います。腕でなく、下半身を使って体の軸がぶれずにきっちり振り切る力がある。それはなぜかと言うと、パリーグの投手は150キロを超える直球を投げる投手がゴロゴロいるから。快速球に振り負けないようにするには振り切る力が大事なんです」。
確かにパリーグは力と力がぶつかる豪快なイメージがある。ソフトバンクの投手は直球で巨人の打者をねじ伏せ、打者は巨人の投手陣の直球をはじき返していた。セリーグは緻密な野球を連想するが、力に飲み込まれたという見方なのだろうか。
◆交流戦もパ・リーグ優位
「いや、セリーグが緻密な野球だと言われますが、パリーグも十分緻密ですよ。データも細かく徹底的に分析する。そうなると力勝負になりますよね。パリーグは150キロを超える投手と対戦するのが当たり前の環境です。凄い変化球を持っているのも大きな魅力ですが、打者が嫌なのは速い球を投げる投手なんです。たったの5キロに思うかもしれないけど、145キロと150キロではこの5キロの差が大きいんです」
今年は新型コロナウイルスの影響で開催されなかったが、交流戦でもパリーグがセリーグに10年から9年連続で勝ち越している。木村は過去の戦いも心理的にも優位に働いていると指摘する。「パリーグの選手たちは、セリーグに対して格下とは言わなくても精神的には上に立っていると思います。戦っていてその空気感はありましたね。言葉にはせずとも交流戦もパリーグのチームには余裕を感じました。同じプロ野球選手だから、個々の能力で凄い大きな差があるわけではない。勝負の分かれ目となる部分でメンタルは重要だと思います」。
パリーグとセリーグの選手の間に存在する「意識の差」がパフォーマンスに影響を及ぼしている――両リーグで戦った木村の証言は説得力がある。
スポーツメディア「New Road」編集部
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