例年通り、今年も6月に入った頃から暑さに加えて湿度も高くなり始め、いよいよ夏が訪れようといる気配を感じられるようになりました。屋外スポーツに取り組む人々からすると、夏というのは今や練習し辛い季節の筆頭なのではないでしょうか。

特に、日本の「暑さ」は高温に加えて、多湿という最悪の組み合わせとなっています。2021年に開催された東京オリンピックでは「通常の暑熱対策では到底対応できない」と、各国特別な暑熱対策方法を研究・準備してきていたのは記憶に新しいでしょう。日に一度ほぼ必ずスコールが降るような東南アジア圏の高温多湿とも、また違った特性を持つ日本の夏。屋外運動にとって「最高の環境」とは言い難いでしょう。そんな日本の夏に屋外で練習を継続していくために、私自身が季節の変わり目であるちょうどこの時期に注意していることをまとめてみました。

目次

暑熱順化

暑熱順化とは、暑い環境に体を慣らしていくこと。簡単に言い換えると、暑さに対する「耐性」をつけることです。やり方はさまざまで、それに関する論文などもたくさん出ているので、興味のある方は調べてみてください。

今回ご紹介するのは、私もこの時期の練習を組むときに意識している、もっともオーソドックスな方法になります。それは、「活動する場所の気温」と「そこで活動する時間」を少しずつ延ばしていくことです。

例えば6月なら、気温は大体25~30℃の範囲になるでしょう。最初の3日は20分くらい動いたら休憩し、また20分くらい動いたら休憩…というのを繰り返していきます。その繰り返しの中で、熱中症や脱水などの症状や暑さによる疲労感などがなくなってきたら、1回の活動時間を30分や40分に延ばします。それにも慣れてきたらさらに延ばし、また延ばして…。この繰り返しの中で、暑さに対して体が耐性を持てるようになるという方法です。

気温が上がってきたら、それに慣れるように上記のようなことを再び繰り返していきます。地味で時間のかかる作業ですが、一番確実で安全な方法と言えるでしょう。

熱中症・脱水症状

夏になるとほぼ、必ずと言って良いほどニュースに出てくる「熱中症」「脱水症状」という言葉。夏場のトライアスロンにおいても一番気をつけるべき問題で、私自身も細心の注意を払っています。予防方法はシンプルで、帽子などを被り直射日光が当たらないようにすることと、水分補給をこまめにする癖をつけること。これに尽きると思います。

前項の暑熱順化の内容にも絡みますが、熱中症は深部体温と呼ばれる、体の奥の温度が下がらなくなって起きることが多いものです。そのため、直射日光などを避けて温度が上がらないようにすることも大事ですが、汗などをかいて体温を下げられる体を作っておくことも重要です。ここまでが、「夏場でも練習ができるように気をつけていること」となります。

内臓疲労による栄養不足

 

ここからは、「練習を継続していくために気をつけていること」をご紹介しましょう。「内臓疲労」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?これは、内臓も筋肉のように運動や日常生活で酷使することにより、疲労し働きが悪くなるという意味です。筋肉痛の内臓バージョンと言えば、少し分かりやすいかもしれません。激しい運動の後だと、食欲がわかなくなるアレです。

夏場は深部体温(体の中心の方の温度)が高くなることで、この内臓疲労が通常よりも酷くなりやすいと言われています。夏場になると食欲がわかなくなる。皆さんも、そんな経験があるのではないでしょうか。この内臓疲労が酷くなると食欲不振になったり、食べ物を食べても栄養を吸収しにくくなったりします。そして、栄養を吸収しにくくなる、練習で疲労した体を回復させられなくなってしまうのです。

対策として、私は吸収しやすい食べ物を選ぶようにしています。生物よりも火を通したもの、炒め物より煮物などいくつか条件はあるのですが、鍋のようにしてしまうのが一番楽で吸収効率も高いでしょう。シチューにしたり温野菜みたいにしたり。とにかく内臓に負担をかけることなく、栄養をしっかり吸収できるものを選んで摂るようにしています。

夜に寝付きにくくなる

こちらも疲労回復に絡んでいるのですが、熱帯夜になると寝苦しくなってしまい、疲労の回復が遅れるので気をつけなければいけません。対策にはクーラーをつけて寝やすい環境を整えることが挙げられますが、涼しい環境を作ることには別の問題も生じます。例えば、クーラーの風を直接受けてしまうと、乾燥して風邪を引いてしまうかもしれません。あるいは、お腹が冷えて体調崩してしまうなんてことも起きてしまいます。

寝ることは、疲労回復において一番重要かつ必要不可欠な要素です。ここが崩れてしまうと、他がどんなに良くてもほぼ必ず体調を崩してしまいます。そのため、季節の変わり目であるこの時期は、特に睡眠には注意しています。夏場の風邪は治りが遅いですからね。

以上のようなことに気をつけながら、季節が夏へと変わっていくこの時期は練習を進めていくようにしています。暑さに慣れること、暑さに耐えることで一番してはいけないことは、「無理をしないこと」だと私は思っています。今回ご紹介した中には、スポーツだけでなく日常生活でも、暑い夏を乗り切るために実践できることがあるのではないでしょうか。体調に気をつけながら、なるべく早いうちに夏を乗り切れる体を作ってみてください。

By 古山 大 (ふるやま たいし)

1995年4月28日生まれ、東京都出身。流通経済大学を卒業後は実業団チームに所属。2020年1月に独立し、プロトライアスロン選手として活動。株式会社セクダム所属。 <主な戦績> 2015年「日本学生トライアスロン選手権」優勝 2017年「日本U23トライアスロン選手権」優勝 2018年「アジアU23トライアスロン選手権」2位 2019年「茨城国体」3位、「日本選手権」11位 2021年「日本トライアスロン選手権」4位

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。