クリケッターの木村昇吾です。今年のシーズン中の話になりますが、強く印象に残ったのが、広島・上本崇司選手が8月28日の阪神戦(マツダ)で9回にプロ初のサヨナラ打を放ったことです。その直前の守備で失策をしていたため責任を感じていたのでしょう。サヨナラ打でナインに祝福を受けた際に、笑顔でなく涙を浮かべていたのが印象的でした。
上本選手とは広島時代に一緒にプレーしました。皆さんご存知の通り、先輩や後輩から愛される明るい性格でムードメーカーとしてチームを盛り上げてくれています。ただ、それだけではありません。彼は守備が非常に巧く複数のポジションを守れるのが大きな強みなのです。上本がまだ若手だった時、当時レギュラーだった東出輝裕(現2軍打撃コーチ)に「木村を見とけ」と言われたそうです。同じように複数のポジションを守るプレースタイルの僕を手本にしなさいという意味だったのだと感じました。同級生の東出がそういう風に思ってくれたことがうれしかったですね。
このような経緯があったので、上本には厳しく接することがありました。ファームの守備で物足りなさを感じ、「もっとできるやろ。1軍で同じプレーをするか?」と問いかけたこともありました。守備が巧いからこそ多少雑でもできてしまいますが、1つのエラーが命取りになる1軍ではそのようなプレーは許されません。真面目にひたむきに取り組む上本だからこそ、もっと上を目指してほしいと思って色々伝えました。
そんな上本もプロ8年目の30歳。同じ内野手で小園海斗選手、羽月隆太郎選手とイキの良い若手が入ってきて、昨季途中に楽天から移籍してきた三好匠選手も手堅い守備が持ち味の良い選手です。いつまでもチャンスがあるわけでなく、危機感を感じていたと思います。チームは低迷して苦しい戦いが続いていますが、上本にとっては出場する1試合1試合が大きなチャンスです。1球1球を大事にする泥臭い野球をこれからも続けてほしいですね。
スポーツメディア「New Road」編集部
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