パデル界の勢いは、どうやら止まりそうにありません。 前回のコラムで、2024年から2つのツアーが一つに統合されるとお伝えしました。今度は、アジア太平洋地域(以下、APAC)でのパデルツアーが誕生したのです。『Asia Pacific Padel Tour』(以下、APPT)という名称で、詳細はまだはっきりしていませんが、2023年11月にバリで最初のトーナメントが開催される予定です。
今後、どのような規模のツアーになるかはまだ分かりません。しかし、日本のプレーヤーにとっては朗報でしょう。中東やアフリカ地域とは実力差が開きつつある日本のパデル界ですが、APAC内ではまだ先頭を走っています。そのため、このようなツアーに出場して、実力もプレゼンスも高めたいところです。
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45歳以上のプロツアーも誕生
個人的には、このニュースの方が朗報かもしれません。独自のパデルツアーを展開している『A1PADEL』(以下、A1P)が、2024年から45歳以上の選手を対象としたプロツアーを開催すると発表しました。現在分かっているのは、2024年4月に大会開催の予定があるということだけ。しかし、A1Pは先日、メジャーリーグのニューヨーク・ヤンキースと提携したことを発表したばかりです。どのような規模で開催されるのかは未知数ながら、私のような熟年プレーヤーにとっては願ってもないチャンスと言えるでしょう。
パデルはまだ歴史が浅く、競技が誕生してから50年弱しか経過していません。このことを考えると、現在ベテランやシニアと呼ばれる世代で、かなり上手なプレーヤーが海外にはたくさんいるのだろうと思います。パデルも他のスポーツと同様に「オフェンス重視、スピード重視」の流れに乗っていますが、一部のファンや選手からは「パデルの面白さが失われつつある」との声が聞こえるようになってきました。
2000年代に13年連続世界ランキング1位で、現在も47歳にして現役を続けているJuan Martin Diazという選手は、「ボールがよく跳ねるパデルは好きではない」と言っています。これは、どういうことなのか。これについて、スマッシュばかりの攻撃的過ぎるプレーは、パデルの魅力が半減しているとインタビューで答えていました。この視点で見ると、ベテランのパデルは“本来の”パデルの面白さを見せてくれる可能性が高いでしょう。身体能力を全面に押し出してプレーするのではなく(そういった熟年プレーヤーがいても面白いですが)、テクニックや戦術を駆使ししたり心理戦を仕掛けたりと、パデルの持つ魅力を十分観客に見せられるプレーヤーが少なくないのだろうと想像します。実際、スペインやアルゼンチンに足を運んだとき、そういったプレーヤーをたくさん見かけました。自分に置き換えてみると、そのスポーツについて何の知識もない状態でを観戦したとき、「速くて」「派手で」「すごい」プレーにしか目がいきません。パデルの歴史が浅い国々で「速いパデル」は多くの人を惹きつける魅力になりますが、スペインやアルゼンチンなどのパデルが成熟している国々では、本来のパデルのほうが好まれるのかもしれません。
第2回全国ベテランパデル大会
2023年11月、第2回目となる35歳以上のプレーヤーを対象とした全国ベテランパデル大会が、千葉県で開催されます。この大会の勝者は、2024年に開催される『SENIORS WORLD PADEL CHAMPIONSHIP 2024』に出場することができます。ちなみに、前回大会はラスベガスで開催され、19カ国500人以上のプレーヤーが参加しました。
私は45歳以上の部にエントリー予定です。日本国内ではベテラン層やシニア層のプレーヤーが少ないので、テニスなど他のスポーツ経験者であれば、出場はもちろん上位進出も夢ではありません。年齢別の「日本代表」として、世界に挑戦してみてはいかがでしょうか。
2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。