筋トレを週に何回やるべきなのかは、永遠の話題かもしれない。筋トレとは、筋繊維を破壊する行為である。そのため、筋トレ直後の筋力は一旦低下するが、一定期間の休息を挟むと、以前よりわずかに高いレベルに回復する。そのタイミングを逃さずに再び筋肉に負荷をかけると、筋力は徐々に向上していく。筋トレとは、この“超回復”と呼ばれるサイクルを繰り返すことでもある。
問題は、筋トレ間の休息期間をどれだけの長さに設定するかだ。よく24~72時間(1~3日)が適当だとされているが、これではあまりにも差が大き過ぎる。24時間休息なら毎日でも筋トレを行えるが、それ以上の場合は間に1日(24時間)あるいは2日(48時間)の休息日を挟むことになる。日曜を休みとする一般的な週間スケジュールに当てはめると、筋トレを行うのは週3回(例:月、水、金)あるいは週2回(例:月、木)ということになるわけだ。
実際に週3回ペースと週2回ペースでは、筋力を向上するに当たってどちらが効果的なのか。これについて調べた研究(*1)が、ヨーロッパ応用生理学ジャーナル(European Journal of Applied Physiology)に2023年7月28日付で発表された。
この研究を主導したのは、オーストラリアにあるエディス・コーワン大学で教授を務める日本人科学者の野坂和則氏だ。
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週2回では効果なし、週3回では効果あり
この研究で用いられた筋トレ動作は、非常にシンプルでかつ最低限のボリュームである。ダンベルを握り、肘を曲げた状態から下へ伸ばす。上腕二頭筋のエキセントリック(伸張性筋収縮)と呼ばれるこの動作を、1日にたった1回だけだ。ただし、最大負荷の1動作に3秒間かけるというものだから、けっして楽なものではない。
研究では26人の若い健康な被験者たちを2グループに分けた。上記のエキセントリック動作を週2回行うグループと、週3回行うグループだ。なお、観察期間は4週間である。4週間後、研究者らは被験者たちの上腕二頭筋の筋力を、観察期間前のそれと比較。すると、週2回グループの筋力には、観察期間前と有意の違いが認められなかった。一方、週3回グループはコンセントリック筋力が2.5%、エキセントリック筋力は3.9%向上したとのことである。
筋トレは週2回では効果がなく、週3回以上を行わないといけない。上の研究結果を素直に読むと、そうした結論になる。これより、以前の研究(*2)では今回と同様の動作(3秒間のエキセントリック動作を1回)を週5回の頻度で行い、今回よりさらに大きな筋力向上効果が認められていた。
「週3回以上」というマジックナンバー
1日たった3秒の筋トレでも効果が上がることは驚きだが、それでも、やはり継続性と規則性は必須条件のようだ。週2回より週3回、できればもっと頻繁に筋トレを行えば、効果はより大きくなる。
しかし、研究主導者の野坂氏は安易に上の結論に飛びつくことにも警鐘を鳴らしている。頻繁とは、けっして毎日という意味ではない。エディス・コーワン大学のプレスリリースで「Professor Ken Nosaka」と紹介されている氏は、そこで以下のような意味のコメントを述べている。
「筋肉の適応は休息時に起きます。筋力向上と筋肥大には休息が必要です。筋肉により頻繁な刺激を与えることは効果的ですが、それは必ずしも心肺機能を向上させるようなトレーニングにも当てはまるとは限りません。ただし、2時間のエクササイズを週1回だけ行うよりは、20分のエクササイズを毎日行う方が、より効果的であるとは言えるでしょう。20分の時間が取れなければ、5分間でもいいのです。それだけでも大きな意味があります。今後、さらなる研究が必要であることは言うまでもありませんが、それでも私たちの研究結果は小さなボリュームのエクササイズを頻繁に、そして規則的に継続することの重要性を証明しました。」
参考:ECU|The magic number: How many days a week you need to exercise to see real benefit
筋トレによる効果を得ようとするのであれば、1回あたりのトレーニング内容のみならず、一定の頻度で継続することも心掛けた方が良いようだ。
アメリカ・カリフォルニア在住。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つほか、現在はカリフォルニア州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。