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戦術の最終目的地
先日棋士の羽生善治さんの動画を見ていてピンときたことがあったので、今日はそれをきっかけにして「練習やトレーニングをやっているのになかなか上手にプレーできない人」に向けて何かヒントになるようなことをお伝えできたらと思います。
その動画の中で羽生さんが「チェスもやるけどチェスより将棋のほうが得意」と話した後に、それはなぜかと聞かれた際、
『(子供の頃から将棋に特化した)思考をトレーニングしているから、そういう(将棋に関する)考え方というか発想が母国語(を喋る)みたいな感じで思考が完全に出来上がっている』
これです、これがパデル(やテニス)の戦術に関する最終目的地です。
考えないと言葉が出てこない外国語ではなく、頭に浮かんだことを思考を挟むことなくパッと言葉に出来る母国語にまで(戦術を考えるということを)高めるということです。
パデルに限らずスポーツというのは「心技体頭」の4つの要素で成り立っています。
そしてこの4つは「目に見える部分(技と体)」と「目に見えない部分(心と頭)」に分けることが出来ます。
上手に見えるのに勝てない、むしろ負けた人のほうが上手い(のに勝てない)、という光景を目にしたことがある方もいるかと思いますが、これにはこの「目に見えない部分」が影響しています。
これはテニスの話になりますが、海外(のテニスが強い国)では小さい頃からストロークやサーブなどの(目に見える部分の)練習以外に、戦術に関する基本(目に見えない部分)をショットの練習と同じぐらいの時間を費やして指導するそうです。(サッカーなどでもよく聞く話です)
これまで私が国内のジュニアテニスの光景でよく見たのは、
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(周りの選手の身体能力が速いボールに追いついていないため)低年齢の速くて良いボールが打てる選手が勝ちやすい
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結果が出るので選手本人も親御さんも(結果が出せる主要因となっている)その速いボールに一層磨きをかけようと頑張る
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18歳以下または一般カテゴリーなど周りの選手が速いボールに対応出来る身体能力を手に入れてくる段階になると、それまで思考のトレーニングをすっ飛ばしてボールを打つ練習だけをしてきたので、そのショットを「どう使うか」を知らないまま試合をすることになり徐々に勝てなくなる。
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です。
みんな大好き、分かりやすくて目に見えて短期で結果が手に入ること
先週末まで開催されていたテニスのグランドスラム、全豪オープンで優勝したシナー選手のコーチはこう話していました。
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彼の両親は素晴らしい、本当に素晴らしいです。
トーナメントに来ても、テニスについて一言も話さないが彼らはそこにいます。
彼らはトーナメントを転々とする生活を楽しんでいます。
決して私たちのところに来て、サーブはこうだ、ボレーはこうだ、次はブレークポイントだなどとは決して言いません。
今の時代彼の家族のような態度をとるのは簡単ではありません。
YouTubeもあるし誰もがコーチになろうとするからです。
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先ほどのジュニアの例はどちらかというと親に原因があることが多いのは私もこれまでの経験で感じます。
その親に子供が引っ張られ、そしてコーチまでもが引っ張られるとまず間違いなく良い方向には進みません。
ですがこれ(分かりやすくて目に見えて短期で結果が手に入ることを望むこと)はジュニアに限った話ではなく、大人でもこれと似たようなことが起こります。
(あえてこの言葉を使いますが)素人は目に見える部分しか見えません。
そして目に見える部分というのは当たり前ですが目で見て変化が分かりますし、その目に見える部分が影響を及ぼして良い結果が出ているとなると、目に見えない、そして良い結果に直接結びついているか分からないものが後回しになるのは至極当然なことだとは思います。(だって見えないのですから)
ですが少し立ち止まって考えてもらいたいのは、「行動」の前には必ず「思考」があるはずです。
何かを食べる、どこかに行くという自分の行動の(結果が出る)前にあれを食べたい、あそこに行きたいという思いがあるはずです。
ここからさらにややこしくなって恐縮ですが、私はこの「思う」と「考える」は違うものとして捉えています。
「思う」と「考える」
冒頭の羽生さんの話に戻りますが、考えるは外国語、思うは母国語のようなものと私は捉えています。
何かを決断するときに考えてから決断する人と、そう思ったからその決断を下した人とでは、決断するのが早いのは当然後者です。
となるとパデル(やテニス)のように毎回毎回一瞬でプレーに関する決断を下さなければいけないスポーツをしている場合、考えながらプレーしている人と自然とプレーしている人がいたら自然にプレーができるのはどちらかというのは言うまでもありません。
そしてさらに付け加えると、そう思うだけでプレーできる人同士がプレーした場合、勝つのは「思っていることのレベルがより高い人」です。
じゃあどうやってレベルの高いことを「思える」ようになるのかというのが今日の本題です。
これははっきりしていて、フォームの練習やトレーニングと同様、(正しく意識して)反復練習することが大事です。
先日メンタルトレーニングの第一人者である高妻容一先生の講習を受ける機会があったのですが、
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私のところによく「先生、明日試合なんです。メンタル強くする方法教えてください」と言ってくる人がいる。
でもメンタルトレーニングというのは“トレーニング”です。
筋力トレーニングと一緒で継続しないと効果は出ない。
メンタルトレーニングというのは魔法のようなものでもなんでもないんです。
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とおっしゃっていました。
これと同じで戦術(思考)のトレーニングも継続が必要です。
メンタルトレーニング(心)や戦術(頭)も、フォーム(技)やトレーニング(体)と同じようにやらなければ向上は見られないということです。
ですが前者の二つは目に見えないというのが厄介です。
手応えも手がかりもない。
じゃあどうすればいいのか。
目に見えない部分を理解しているプロのコーチを頼ることです。
これまで親や先生、または上司に「目には見えないけれどもなんとなく道標を示してもらった」という経験がが一度や二度はあるのではないでしょうか。
良いコーチというのはその競技に関して間違いなくその道標を持っています。
自分が考えていること、思っていることを伝えてみて、合っているかどうかをコーチと話し合うのは「トレーニング」と同じです。
ウェイトトレーニング中にフォームが悪いとトレーナーに正しいフォームに直されますよね。
それと同じでコート上で悪い判断をしたらコーチが直してくれます。
「練習もトレーニングもたくさんしてるのになかなか上手にプレーできない」
こう感じている人は目に見えない部分のトレーニングも検討してみてください。
2019年にアジア人初となるWORLD PADEL TOUR出場を果たし、2021年現在、45歳にして再度世界に挑戦中。全日本パデル選手権二連覇、アジアカップ初代チャンピオン。国内ではコーチ活動も行なっている。モットーは「温故知新」。