全国高校サッカー選手権大会は、山梨学院の11大会ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。大会期間中、議論を巻き起こしているのがロングスローだ。決勝で敗れた青森山田が武器の1つとしていて、大会を通じてロングスローから得点を重ねた。SNS上では「立派な戦術」、「誰にでもできるわけではなく技術が必要」などと賛成する一方で、「サッカーは足でするスポーツ」、「オフサイドとの整合性が取れない」、との声が上がっている。
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◆「賛否」ではなく「好き嫌い」
この議論は大前提として「好きか嫌いか」を意見するのは自由だが、「賛否」の結論は出ている。ルール上、ロングスローは認められているので、「否」はあり得ないからだ。ロングスローが好きではない人の中には「美しくない」、「盛り上がらない」との批判もあるが、限られた選手しかできない技術が詰まったロングスローは美しく、スタジアムを沸かせる力がある。
◆40mの高速ロングスロー
まず、このテーマで外せないのが、元アイルランド代表のMFロリー・デラップだろう。「人間発射台」の愛称を持ち、その飛距離は約40mと言われている。しかも、高速で弾道が低いためディフェンスは対応が難しく、数々のゴールをアシストした。相手ゴール近くでスローインを獲得すると、敵チームのサポーターからも歓声が上がったという。
デラップと同じイングランド・プレミアリーグのストーク・シティでプレーしたDFライアン・ショットンも、ロングスローでチャンスを演出した。デラップのような低弾道ではなかったが、飛距離は“元祖”を上回ると評判だった。
◆Jリーグにもロングスローの名手
“和製デラップ”の異名を持つのが、このオフにセレッソ大阪から清水エスパルスへの完全移籍が決まったDF片山瑛一だ。J2ファジアーノ岡山に在籍していた2017年には、2試合連続でロングスローから得点を演出するなど、アシストを量産。予想を超えるスピードにチームメートも触れられず、スローインがそのまま相手ゴールに入りそうな場面もあり、スタジアムがどよめいた。
30mを超える正確なロングスローを武器としているのが、セレッソ・大阪のMF藤田直之。2010年から5年間所属していたサガン鳥栖では、長身FW豊田陽平とのホットラインが得点源で、チームの名物にもなっていた。V・ファーレン長崎のDF二見宏志の飛距離もJリーグ屈指で、2016年途中まで在籍していたベガルタ仙台ではスローインの体勢に入ると、サポーターがスローインのポーズをしながら、選手の応援歌・チャントを熱唱していた。
スポーツではないが、年末の風物詩になっている若手漫才師日本一を決める「M-1グランプリ」でも昨年、優勝したマヂカルラブリーの漫才がSNS上で論争を招いた。これも、審査員に採点されている以上はルール上認められているため、賛否を問うのはナンセンスで、好き嫌いの問題。
スローインにも当然ルールがあり、それに反すればファウルスローを取られて相手チームのスローインとなる。技術が必要なロングスローは、ファウルスローで攻撃のチャンスを失うリスクが高くなる中で選んだ戦術といえる。そこに、賛否を挟む余地はないだろう。
スポーツメディア「New Road」編集部
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