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◆走塁の職人育成へ
今シーズン、DeNAの攻撃スタイルが大きく変わりそうだ。三浦大輔新監督が掲げるのが「走塁改革」。50メートル5秒8の宮本秀明を「足のスペシャリスト」として育成しようと、対外試合で積極的に起用している。さらに、俊足ではない選手も盗塁を仕掛けるなど、足を使った攻撃がチームに浸透しつつある。
キャンプから変化があった。スポーツ紙の記者は「ラミレス監督時代には考えられないくらい、バント練習に時間を割いていた。30分を超えた日もあった」と驚く。マシンを使ったオーソドックスなバント練習だけでなく、セーフティースクイズや偽装スクイズなど、シーズンで使う機会がめったにないケースも想定して精度を高めた。
また、盗塁や走塁への意識を強くする練習も取り入れた。盗塁のスタートを切る練習で大型モニターに映し出したのは、他球団の投手の映像。より試合に近い形で、投手のクセやスタートのタイミングを確認した。
◆盗塁も犠打もリーグ最少
DeNAは昨シーズン、チーム打率と本塁打数はリーグトップだった。しかし、得点数は3位。その一因となったのは、ともにリーグ最少だった犠打と盗塁の数だった。特に盗塁は企画数が46(成功31、失敗15)と圧倒的に少ない。3チームが100を超え、広島は98、中日が66となっている。盗塁数は2年連続でリーグ最少。犠打数は、ラミレス監督がチームを指揮した2016年から昨年までの5年間、ずっとリーグで最も少ない。
三浦新監督に変わった今年のキャンプには、盗塁や犠打を重視するスタイルに転換する方針が表れている。指揮官にとって初の対外試合となった2月13日の練習試合でも、中日に敗れはしたが、機動力を前面に押し出した。
4回までに3人の選手が二塁へスタートを切った。そして、8回に伊藤裕季也がチーム4度目の挑戦で初めて盗塁に成功した。身長182cm、体重93kgと大柄な伊藤は、プロ2年間で1軍では一度も盗塁を試みたことはない。三浦監督は試合後に「やってみないとわからないことがある。得られるものはたくさんあった」と充実感をにじませた。
◆過去には「スーパーカートリオ」
かつての「大洋ホエールズ」や「横浜ベイスターズ」は、大技と小技が融合した強力打線を築いたときもあった。「スーパーカートリオ」と命名された、高木豊、加藤博一、屋鋪要は1985年に3人で計148盗塁。加藤は39犠打を記録するなど足と小技で相手を揺さぶり、レオンや田代富雄らが走者を還した。
◆「マシンガン打線」も小技融合
日本一に輝いた1998年の「マシンガン打線」は、鈴木尚典、ロバート・ローズ、駒田徳広、佐伯貴弘らの派手な打撃がインパクトを残した。ただ、1番・石井琢朗と2番・波留敏夫の小技やつなぎの打撃が、打線につながりを生んでいた。石井は、この年39盗塁でタイトルを獲得している。
「盗塁に失敗すれば、アウトカウントが1つ増えるリスクはある、「犠打は相手にアウトを1つ渡すことになる」といった否定的な意見もある。積極走塁だけで終わらせないために、DeNAはシーズン開幕までに確実性上げることが不可欠だ。精度が高くなれば、次の塁を狙う姿勢や、一変した攻撃スタイルは相手チームの脅威になるだろう。
スポーツメディア「New Road」編集部
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